メアリー&マックス(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

メアリー&マックス(ネタバレ)

メアリー&マックス

三角絞めでつかまえて-メアリー&マックス

原題:MARY & MAX
2008/オーストラリア 上映時間94分
監督・脚本:アダム・エリオット
声の出演:トニ・コレット、フィリップ・シーモア・ホフマン、エリック・バナ、バリー・ハンフリーズ、ベサニー・ウィットモア
(あらすじ)
メルボルンに暮らす8歳の少女メアリー(トニ・コレット)は、ある日アメリカに住む誰かに手紙を送ろうと思い立ち、電話帳から選び出した人物に手紙を書き始める。そしてニューヨーク、人付き合いが苦手で一人孤独な日々を送っていた中年男マックス(フィリップ・シーモア・ホフマン)のもとに、オーストラリアから一通の手紙が届く。それを機に、メアリーとマックスの2つの大陸をまたいだ20年以上にわたる交流がスタートする。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




91点


もともとクレイアニメが嫌いじゃないというのもあるんですが(でも、「ウォレスとグルミット」とかは観てなかったり…)、予告編を観ただけでグッときまして。シネ・リーブル池袋に行ってきたんですが…。「そりゃないよ (ノДT)」と思いました。


なんと初日プレゼントということでこんなものをもらっちゃいました。
三角絞めでつかまえて-紙ねんど

開けてみると中身は粘土! ああん、気が利いてるじゃないの! 僕は不器用なので何も作れませんが…。
三角絞めでつかまえて-カラフルな中身


メアリーは額のアザにコンプレックスを持つ孤独な少女で、マックスは孤独な中年男(物語中盤でアスペルガー症候群と告白する)。この2人が「20年以上にわたって文通する」なんて聞いちゃったら、想像するだけで涙腺が決壊しそうになるのは僕だけじゃないハズ。しかも、彼らの描写が元が粘土とは思えないほど情緒豊かでね。例えば、メアリーが泣く時、下唇がワナワナと震えたりして、それだけでこっちも号泣メーン! ヽ(`Д´)ノ もう全編泣かされまくりなんですよ…。

何が良いって、メアリーのキャラクター。彼女は、両親からの愛情もあまり受けてなくて、いじめられっ子で、友だちもいなくて、ずっと冴えない感じで生きてきた女の子。マックスとの文通が彼女の心の支えだったりして。必死にバイトして貯めたお金でコンプレックスの元だった額のアザを取って、片想いのダミアン(エリック・バナ)に一世一代のアタックを仕掛けても非常に痛々しくて、激しい自己嫌悪に陥ったりして、「私なんか誰からも愛されないんだわ 川ノω・、)」とションボリしたりと、自己評価が低い人ほど共感できる感じなんですよね。


唯一の友人マックスに泣きながら手紙を書くメアリー。頑張って!
三角絞めでつかまえて-メアリー


さらに、ちょっと人生が上手くいったら、Z-O-U-C-H-O-U、“増長”するのも身に染みるというか。人間が初めて何かを成し遂げたと思った時に陥りがちな心の罠、それが“増長”。僕も昔、単に“初カノ”が出来ただけなのに、まるで天下統一を成し遂げたかのような増長っぷりを見せたものです…(遠い目)。さらに自分が幸せになった人間は、つい上から目線で「他人も幸せにできる!」と思いがちなのは確かでして、「メアリーが増長してマックスを傷つける→落ち込む」というくだりは、観ていて恐ろしく胸が痛かったです。誰もが自分の一部分を投影してしまう、素晴らしいキャラクターじゃないでしょうか。


でもね、若いうちは増長もよし! この増長した若者がどうなったか知りたい人は「逆境ナイン」を読んでネ。
三角絞めでつかまえて-増長もよし!


マックスも良かったです。観客がモロに自己投影できるキャラクターではない…ハズなんですけど、例えば、メアリーの返事にパニックを起こして返信を戸惑うシーンとか、僕もメールがくると恐ろしく返信に悩むタチなので、少しだけ気持ちが分かるような気がしたし(もちろん入院するほどにはなりませんが)。タバコの吸い殻に激怒するくだりも(表情が素晴らしい!)、大なり小なり、誰にでもある一面というか。


マックスは自分では笑顔が作れないので、表情を書いたメモを見て作ったりする。
三角絞めでつかまえて-マックス


で、この映画で一番心を動かされたのは、落ち込んだメアリーが首吊り自殺を図るシーン。BGMの「ケ・セラ・セラ」が超泣かせるんですが、お腹に子どもがいることが発覚しちゃったりして、全観客が「誰か止めてー!(/TДT)/」状態。正直、僕は序盤から張りまくられていた伏線に全然気付かなかったので、あの場面で広場恐怖症のヒスロップさんが登場した時は心から「良くやった! ヽ(`Д´)ノ」と感動しましたね。

一応、オチを書いておくと、すべてを失いつつも子どもを授かったメアリーが、マックスと仲直りした1年後、初めてニューヨークの彼の元を訪れると、彼はその朝に亡くなっていて。その顔には微笑みが浮かんでいて(手元には「表情のメモ」があったから、それが本当の笑顔かどうかは分からないんだけど)、「素敵な友だちができて、幸せな人生だったね」って感じ。涙の瓶やメアリーの手紙とか全部大切に飾られてたりしてね…。「これで泣かない人類がいるのか?」と思うほどの破壊力でした。

振り返って考えると、全編気が利いてる作品だと思いまして。「1日4秒のペースで作る」ってだけでも気が遠くなるのに、劇中の演出、色の使い方(2人の世界の色調の違いとか、贈り物の色は変わらないとか)、ブラックユーモア、小道具、音楽(タイプライターを打つ場面で「The Typewriter」が流れたりと、僕が分かるほどベタ)など、あらゆる要素がしっかり考えられている感じ。「他人を愛するにはまず自分自身を愛せ」とか「人間は誰もが不完全な生き物」(額のアザ、アスペルガー症候群、アル中、両脚がない、広場恐怖症、吃音など、登場人物たちのほとんどが何らかの問題を抱えてるのは、このメッセージを強調するためですよね、たぶん)とか「家族は選べないけど友人は選べる」(友人の方が選んでくれないケースが多々ありますが)とか、良い台詞もいっぱいだしさ。まぁ、「実話がベースなら、この映画は劇中でメアリーがマックスにやったことと同じじゃないの?」と思ったりもしたんですけど、モデルになった友人にはちゃんと許可を取ったそうなので全然OK。ちくしょう、アダム・エリオット監督、天才だと思いました。


紐切り空手の鎬昂昇も思わず嫉妬!
三角絞めでつかまえて-鎬コウショウ


あとね、書いておきたいのがパンフレット。1000円とかなり高いんですが、絵本っぽい装丁がなかなか良い感じ。しかも、中身も絵本風だったりするのが良かったし、コラムも充実していて読み応えがある上に、なんとメアリーとマックスの手紙が付いてるんです! これは非常に素晴らしい仕事というか、作った人は良くやった! ヽ(`Д´)ノ(偉そうに) しかも、アダム・エリオット監督が描いたキャラクタースケッチポストカード(非売品)ももらえたので、非常にオトク感溢れる買い物でしたよ~ (・∀・)ニヤニヤ 不満点は「“絶賛コメントのコーナー”が不要だったかな」程度でした。


絵本っぽい装丁。贅沢を言うとダミアンは邪魔かも。
三角絞めでつかまえて-パンフレット

中を開くとこんな感じ。キモ可愛いですな。
三角絞めでつかまえて-絵本的な感じ

そして、なんと手紙が付いてる! 文字が滲んでたりと、良い仕事してるじゃねぇか!ヽ(`Д´)ノ
三角絞めでつかまえて-手紙もついてるぅ!

さらにポストカードまでもらっちゃった。至れり尽くせりですな。
三角絞めでつかまえて-さらにポストカードまで!

ただ、「絶賛コメント」はいらないかも。だったらコラムをもう1本追加してほしい…って、贅沢かしら。
三角絞めでつかまえて-絶賛コメントはいらないかなぁ


というワケで、基本的には絶賛なんですけど、こういう“救いがあるんだかないんだか”的な映画って、ちょっとイラッとするところもあって。一応、ハッピーエンドなんだけど「そりゃないよ」感が拭えないというか、飲み込みづらいところもあるというか…。まぁ、好きな作品なんですけどね。あと、「金魚や人が容赦なく死ぬ」などのブラックユーモアがキツい箇所もあったりするので、万人にオススメかというと微妙な気がしないでもないけど、でも、やっぱり良い映画だと思うので、気になる人はぜひ劇場へ行ってみてくださいな。




アダム・エリオット監督作。ちょっと気になりますな~。
三角絞めでつかまえて-ハーヴィ・クランペット
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今、一番ほしいクレイアニメ。ネットでも観られますが、こういう素晴らしい才能は買って支えないとなぁ…。
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