渇き(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

渇き(ネタバレ)

渇き

三角絞めでつかまえて-渇き

原題:박쥐 THIRST
2009/韓国・アメリカ 上映時間133分
製作・監督・脚本:パク・チャヌク
出演:ソン・ガンホ、キム・オクビン、シン・ハギュン、キム・ヘスク
(あらすじ)
アフリカで行われたワクチン開発の実験台となり、その際に輸血された血液のせいでバンパイアとなってしまった神父サンヒョン(ソン・ガンホ)。幼なじみの妻であるテジュ(キム・オクビン)と恋に落ちた彼は、テジュから夫(シン・ハギュン)を殺害して欲しいと頼まれるが……。(以上、エイガ・ドット・コムより)

予告編はこんな感じ↓




84点


新宿武蔵野館にてパク・チャヌク監督の「渇き」を観てきたんですが、「渇き」と聞くと「刃牙」に出てきた鎬昂昇を思い出す人は意外と多いのではないでしょうか?


まぁ、こっちは「飢き!」ですが。このころの鎬昂昇の顔って独特で好き。
飢き!


…いきなり非常にどうでも良い話を書いてしまいましたが、とりあえず感想を。まず、この予告編を観て僕は、

「実験によって吸血鬼になってしまった神父が苦悩しつつもその能力を使って、奴隷同然の扱いで虐待され続けている人妻(殴ったり蹴られたりは当たり前状態)を助けたものの、敵対勢力(相手の家族や警察など)と戦ううちにその能力が暴走してしまって、逆に好きだった人妻に恐れられてしまうことに。結局、神父は人妻の元を去るが、彼女をいつも影から見守っている…(最後はちょっと『ダークナイト』気分)

みたいな感じの映画かと思ったんですよ。そしたら、まったく違いまして。僕の脳内で繰り広げられた陳腐な感じではなくて、かなり面白かったですよ。

この映画は本当にスゴいんですよ。“陰惨なんだけどコミカル”というか(パク・チャヌク監督作らしい感じ)。旦那を殺して罪悪感に苛まれた2人が旦那の亡霊に取り憑かれていくシーンとか、もう笑っちゃうんだけど恐ろしくて。ストーリーなんて全然予想していたのと違って、夫婦生活が悲惨なのは確かなんですけど、殺されるほど非道い家族ではないし(確かに地獄ではあるんですが)、テジュの方もちょっとズルかったりして(仕方ないんですが)。

旦那の亡霊に取り憑かれて発狂寸前になったテジュが泣きながら義理の母親に謝るシーンとか、本当にキツかったですよ。あんなに気持ち悪いシーンもなかなか観られないというか。ところが、テジュが神父に殺されて吸血鬼として復活したら、今度はすっかり邪悪になって、また作品内の雰囲気が変わってしまってね…(またそれらを見つめている義理の母親がまた怖い)。どう観れば良いのか、場面場面でちょっと混乱しました。なんか良い意味で「鼻っ柱をつかまれて引きずり回されている気分」でしたよ。最後、2人で朝日を迎えて死ぬシーンは、「30デイズ・ナイト」を思い出しましたが、本作の方が全然泣けましたね。トランクの中に逃げようするテジュがちゃんと神父も一緒に押し込もうとするところとか、あのブカブカのクツとかが可愛いだけに、笑っちゃうんだけど悲壮感が漂うというか、もう切なくて切なくて…。「テジュさんと一緒にいたかっただけなのに」「楽しかったわ、神父様」とかね、涙腺が崩壊いたしました。

ソン・ガンホが素晴らしいのはいつものことで、今回も本当に良かったんですが、僕的にはキム・オクビンも結構良くて。というか、僕が大好きなラジオ番組「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」でお馴染みの漫画家兼コラムニストのしまおまほさんに似ているなぁと。そうなると、もう他人事として観ていられないというか、変な感情移入をしちゃったりして。官能シーンは気恥ずかしくて直視できなかったし、邪悪になっていく辺りでは「ミューズがそんなことしちゃダメだよ! お父さんが悲しむよ!」なんて思ったり。だから最後のシーンは余計に可哀想でしたね…。何はともあれ、夫役のシン・ハギュンも恐ろしく気持ち悪かったし、義理の母親役のキム・ヘスクの眼力もかなりスゴかったりと、役者さんたちは全員良かったですな。

ちなみに僕的には“先輩の老神父を殺した理由”や“実験施設のキャンプで強姦した理由”が釈然としない感じはあるんですが、前者は「吸血鬼になりたいという願望をムキ出しにしている老神父に絶望したから?(自分の秘密を唯一知っている人間だし)」と、後者は「奇跡の人と崇められている自分を貶めたかったから?」などと考えておりますが…。まぁ、どうなんでしょうな~。あと、あの義理の母親ですが、あのタイミングしかないとはいえ、麻雀中に暴露したら皆殺しにされるに決まっているんだから、本当に止めてほしかったです。

そんなワケで、ダラダラと書いてきましたが、僕的には「すげぇっ!」としか言えない映画でしたよ。残酷描写とかが大丈夫な人ならそれなりに楽しめると思いますので、興味がある人は劇場へどうぞ。




パク・チャヌク監督の“復讐3部作”第2弾。横スクロールゲームを思わせるアクションシーンは映画史に残ると思います。

 


プロレス映画としては本当にイマイチなんですが、この映画のソン・ガンホも結構好きです。