食堂かたつむり(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

食堂かたつむり(ネタバレ)

食堂かたつむり※シネマハスラーへのリンクを追加しました(3/2)

三角絞めでつかまえて-食堂かたつむり

2010/日本 上映時間119分
監督:富永まい
原作:小川糸
出演:柴咲コウ、余貴美子、ブラザートム、田中哲司、志田未来、満島ひかり、江波杏子、三浦友和
(あらすじ)
失恋のショックから心因性失声症になってしまった倫子(柴咲コウ)は、自由奔放な母(余貴美子)の暮らす田舎へ戻り、「食堂かたつむり」を開くことにする。決まったメニューはなく、1日1組のお客のためにイメージを膨らませて料理を作るうち、倫子は徐々に元気を取り戻していく。やがて、倫子の食堂で食事をすると願いがかなうという噂が町中に広まっていき……。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




5点


新宿バルト9で観てきました。正直、劇場で予告を観る限りは僕が好きなタイプの映画ではなかったんですが、「タマフル」の人気コーナー「シネマハスラー」の課題映画になってしまったワケでして。だから、「主人公が失語症って『木人拳』みたいだな~(実は、あえて黙っていたという設定)」「作中でジャッキーは“だんまり”とか呼ばれてたけど、その表現は今でも大丈夫なんだろうか?」とか思いながら、何とか興味を持って観に行ったんですが…。ううむ、やっぱり観なければ良かったです。

いや、この手の映画が好きな人は、それはそれで良いんじゃないかなと思うんですよ。そもそも僕が観に行ったことが間違いというか。僕が好きなジャンル映画なんて、それこそ駄作だらけだったりしますし。大体、「シンケンジャーVSゴーオンジャー」を高評価したりしているワケですからね。だから、この映画原作小説が好きな人は、もうこの記事は読まない方が良いと思います。偏見づくしの分かり合えない感想が続くと思うので。

感想を率直に書くと、気持ち悪かったです。僕はこの手の“癒し的な雰囲気”の映画って大嫌いなんですよ。好きな人には申し訳ないですけど、「めがね」とか「かもめ食堂 」とかも同じ理由で、観てはいないのでこういうことを書くのはどうかと思いつつも、ポスターを観るだけでイラッとするというか、生理的に受け付けないというか(だから超熟は食べない)。

あの食堂に憧れたりする人っているんでしょうね。「物置を改装した手作り感あふれる食堂」「完全予約制でお客さんは1日1組だけ」「決まったメニューはない」「食べると願いが叶う」って100パーセントの絵空事ですが、こういうのに憧れちゃうんでしょうね…。大人げないことを承知で書きますね。僕の両親は川崎で肉体労働者向けの定食屋をやっていたんですが、食堂経営はこんな甘いモンじゃないですよ!(両親の離婚事由の1つ) つーか、料理の代金はいくらなんですかね? 幼稚園児とか食べにきてたけど、もしかして無料? まぁ、実家暮らしだからそれもできなくはないでしょうけど。というか、物置を改装するにしてもキッチンとかも設置するワケだから、電気や水道の工事が恐ろしく大変だと思うんですけど、どうしたんですかね? 「ビフォアーアフター」を観る限り、800万円くらいの費用がかかりそうなんですが、それもブラザートムさんが貸してくれたんですかね?(まぁ、結局、母親が出してくれてたみたいですけど) というか、それも全部手作りだったんですかね?

って、まぁ、ファンタジーですからね。そんなことに突っ込んでも意味がないんでしょうね。オッパイ山を眺めていたら、突然、スタンド能力が発現して、ジョジョ第4部のトニオ的な能力を得るような映画ですからね。能力を得た理由もまったく説明されないけど、良いですよ。“料理を食べるとイチイチ画面外から食材が迫ってきて登場人物を取り囲む描写”も気持ち悪いけど、良いですよ。もう願いを叶えるだけじゃなく、未亡人の腰も治療したりしているけど、良いですよ。正直、「そんなにスゴいなら母親のガンも料理で治せるんじゃないの?」と思いましたけど、まぁ、それも良いですよ。食材を自転車で運ぶときにそれらが大量になってカタツムリの殻っぽく見える時に“わざわざ実際の殻を見せたりする”のも観客をバカにしているような気がしたけど、別に良いですよ。その他、「お目掛けさんに出すメニューの異様さ」とか「処女懐胎のくだりのつまらなさ」とか「三浦友和のキャラ設定」とか、文句を言いたいところはいろいろあるんですが、もう良いですよ。

でも、そうなると「特別なアタシは超能力に目覚めて好き勝手な料理を作ればみんなが幸せになるのよ代金なんかいらないわ実家暮らしだからそれにしてもアタシのお店ってオシャレでしょ大評判なのよウフフ」って圧倒的なファンタジーを見せつける一方で、「満島ひかりさんの親が潰れそうな喫茶店を経営しているというリアルにありそうなエピソード」があったりするのは、ちょっとフェアじゃない気がしちゃうのは僕だけですかね? しかも、“虫を入れた問題”もいつの間にか解決しちゃって、最後の披露パーティに満島ひかりさんがちゃっかり仲良さそうに混ざってるし…。なんですかね、アレ? そういえば、満島ひかりさんが料理に虫を入れたことを告白した時、柴咲コウさんが困った顔で黙ってましたけど、“あれだけで解決していた”んですかね? この満島さんのエピソード、安易な感じが非常に不快でした。

とにかく頭に来たのが、終盤の展開。母親が死ぬ前にエルメスというペットとして飼っていた豚をみんなで食べることになるんですが、もう「バカじゃないの?」と思って。いや、別に僕が飼っている豚じゃないし、それはそれで好きにしてくれれば良いんですけど、“死生観をちょっと語りましたよ”的な“したり顔”に吐き気がするというか。この原作者は犬を飼っていたらポシンタンにして食べるんですかね?

母親が死ぬところは、シングルマザーに弱い僕はちょっと泣いちゃいましたけど、でも、やっぱり酷い親だと思いますよ。「強くしたかった」んだとしても、「倫子の倫は不倫の倫」とか娘に言うのはどう考えても最低だし。最後、失語症だった主人公が死んだ鳩(主人公がスタンド能力に目覚めた時に枝をくれた鳩っぽい)を調理して食べて、「美味しい」としゃべったところで物語は終わるんですが、僕的には“薄っぺらで気持ち悪い映画”としか思えませんでした。

でも、いわゆる普通の人たちは僕が大好きなB級格闘アクション映画(例えば「サイボーグ」とか)を観たら、「薄っぺらで気持ちが悪い映画だったなぁ」と思ったりするでしょうから、まぁ、そんなモンなんでしょうな。要はこれも一種のジャンル映画ということで、この手のジャンルが好きな人は劇場に足を運んでも良いかと思われます。

宇多丸師匠の批評がアップされたので貼っておきます。かなり勉強になりますな~。




原作小説です。かなりヒットしたようですが…。



富永まい監督作。面白いんでしょうか。



だからといって、こういう映画を薦める僕もちょっと恥ずかしい人間というか…。