カティンの森(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

カティンの森(ネタバレ)

カティンの森

三角絞めでつかまえて-カティンの森

原題:KATYN
2007/ポーランド 上映時間122分
監督・脚本:アンジェイ・ワイダ
出演:マヤ・オスタシャースカ、アルトゥール・ジミエウスキー、マヤ・コモロフスカ、ヴワディスワフ・コヴァルスキ、アンジェイ・ヒラ、ダヌタ・ステンカ、ヤン・エングレルト、アグニェシュカ・グリンスカ、マグダレナ・チェレツカ、パヴェウ・マワシンスキ、アグニェシュカ・カヴョルスカ、アントニ・パヴリツキ、クリスティナ・ザフファトヴィチ
(あらすじ)
1939年、ポーランドはドイツ軍とソ連軍に侵攻され、すべてのポーランド軍将校はソ連の捕虜となった。アンジェイ大尉(アルトゥール・ジミエウスキー)は、彼の行方を探していた妻アンナ(マヤ・オスタシャースカ)と娘の目前で、東部へ連行されていく。アンナは夫の両親のもとに戻るが、義父はドイツに逮捕され収容所で病死し、残された家族はアンジェイの帰還を待ち続ける。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




76点


「なんも言えねぇ…」なんて流行語がありましたが、この映画を観て、そう思いましたよ。1940年ごろのポーランドで実際に起きたカティンの森事件をベースに作られているんですが、なんか非常に重くてイヤ~なモノを観たというか…。

当時のポーランドはドイツとソ連に侵攻されていたんですが、そこでソ連が2万人以上のポーランド人の捕虜を虐殺し、その罪をドイツに被せて知らんぷりをしていたワケですな。戦争が終わった後、ポーランド政府はそのことを知りつつも、ソ連に遠慮して(同じ共産主義国だから?)、公式にはドイツのせいにしていたんですが、実際に家族が殺されたりした人たちは「そんなウソは納得いかない!」って怒っていたと。この映画はそんな“国のウソ”に振り回された人たちの群像劇でした。

映画的なカタルシスはまったくなく、登場人物たちは時代に翻弄されるばかり。最後、虐殺されていたアンジェイ大尉の手記が妻アンナの元に返ってきたこと自体は、ちょっと一矢報いた感はあったものの、その後に続く残酷すぎる虐殺の再現シーンには何の救いもなくて(次々と後頭部を撃たれて、その死体はモノのように扱われていく)、本当に暗い気分になりましたよ…。

アンジェイ・ワイダ監督はこのカティンの森事件で父親を実際に亡くしているそうで、それだけに登場人物たちの心情のリアルさは半端じゃなかったし、劇中からは“怒り”を感じました。「2万人が虐殺された」と単純に聞くだけでも酷い話なのに、よくよく考えれば当たり前の話ですが、その1人1人には人格があり、家族がいたり、恋人がいたり、夢や希望があったりしたワケですよ。それを一方的に奪われた挙げ句、本来は守ってくれるハズの祖国がその悲劇をウソで覆い隠すことに加担しているという絶望…。なんともキツい話ですよね。こういうのって、ポーランドやソ連が特別なワケじゃなくて、どこの国でもあるんだろうなぁと思ったり。

今のポーランドの若い人たちの中にはこの悲劇を知らない人もいるとか。監督はカティンの森事件を風化させないために作ったので、映画から非常に教育的な臭いがする感は否めないと思います。でも、たまにはこういう作品を観るのも良いんじゃないですかね。ちなみに岩波ホールで初めて観たんですが、客層がシネスイッチ銀座より真面目というか、非常に厳かな雰囲気で新鮮でした。「監獄島」とか絶対上映されないでしょうね。





原作本。映画より家族の描写に比重が置かれているとか。読もうかなぁ。
カティンの森 (集英社文庫)/アンジェイ ムラルチク

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「ワルシャワ蜂起」3部作の最終章だとか。アンジェイ監督の作品は一本も観たことがなかったです…。
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