歯医者さんの豆知識:「歯ぎしり、食いしばり」について考えてみましょう! | デンタルケア神谷町の独り言 φ(.. ) Deep breathing of dental care Kamiyacho

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2012年7月よりスタートしました当院ブログ!!これからも歯科の豆知識から雑学!!スタッフの小言などジャンルを問わず気まぐれに記載していきますのでどうぞよろしくお願いします(^ ^)/

「ストレス社会」といわれる現代の日本では、多くの方が強いストレスにさらされて生活しています。仕事や家事・育児など、一人ひとりがさまざまな悩みと戦っていることでしょう。そんな皆さんに注意してほしいのが、歯ぎしりや食いしばりです。おもにストレスが原因で引き起こされる歯ぎしりや食いしばりは、体に悪影響を及ぼす恐ろしい癖なのです。「私は大丈夫」と思っている方こそ要注意!無意識のうちに癖になっているケースは非常に多く見られます。そこで今回は、歯ぎしり・食いしばりについて恐ろしい弊害やチェック方法、治療法などを詳しくご紹介します。毎日忙しく働くあなた、他人事と思わずにぜひ確認してみてください。
 

☆★☆まずは自分の現状をチェック!☆★☆

 
歯ぎしりや食いしばりの恐ろしさについて説明するまえに、まずは自分にその癖があるかどうかをチェックしてみましょう。以下の項目にあてはまるものがある方は、歯ぎしりや食いしばりをしている可能性が髙いといえます。
  • 朝起きるとこめかみや口の周りが疲れている、もしくは痛みを感じる
  • 歯や歯茎が痛い
  • 顎がだるかったり、痛みがある
  • 歯茎や歯が水にしみる
  • 仕事中など、何かに集中しているときに、気付くと歯を食いしばっている
  • 慢性的な肩こりや頭痛に悩まされている
  • 頰の肉や舌に歯の跡がついている
また、歯ぎしりを発見するには、犬歯をチェックするのがおすすめです。通常、犬歯は先が尖っていますが、歯ぎしりの癖があると、歯の先がすり減って平らになってしまうのです。
(この写真のように)「歯の先端が削れてきている!」という方は、そのまま上下の歯がぴったりと合わさるところまで歯を動かしてみましょう。
いかがでしょうか?通常の状態よりも、かなり大きく下顎の位置がずれていることと思います。あなたの歯は、実は寝てるあいだにその位置まで動いて歯ぎしりをしているのです。「こんなに歯を動かすことなんてしていない!」という場合は、無意識のうち、つまり寝ているあいだに動かしているということになります。上記で挙げた例のうち、どれかに心当たりがある方は、早めに歯ぎしり・食いしばり対策をすることをおすすめします。

☆★☆歯ぎしり・食いしばりってどんなもの?☆★☆

歯ぎしり・食いしばりといっても、実はいくつかのタイプに分類されます。

グラインディング

上下の歯をグライド、つまり滑らせるように動かすことで、歯がすり減っていくものです。特徴としては、ギリギリなどという音が出ることが挙げられます。また、顎全体が大きく動くため、歯も広範囲にわたってダメージを受けます。
 

クレンチング

顎を動かすことなく、上下に強く噛み締めてしまうものです。歯や顎に強い力がかかり続けてしまい、グライディングよりも悪質といわれています。また、グライディングと違って音がしないので、なかなか自覚されないのも怖いポイントです。
 

タッピング

上下の歯が震えるようにぶつかるもので、カチカチと音を立てるのが特徴です。この中で最も注意すべきは、音の出ないクレンチングです。歯や顎の不調だけでなく、頭痛や肩こりなど、一見歯ぎしり・食いしばりとは関係がない症状につながるケースが非常に多く見られます。
なお、人によっては複数のタイプに該当していることもあり、その場合はダメージも大きくなるので、思い当たる方は速やかに歯科医師に相談しましょう。
 

☆★☆歯ぎしり・食いしばりをすると体にどんな悪影響があるの?☆★☆

 
冒頭で「歯ぎしり・食いしばりは体に悪影響を及ぼす」と書きましたが、ここからは具体的にどんな症状が引き起こされるのかを「身体の部位」ごとにご紹介します。
 

歯ぎしり・食いしばりが「顎(あご)」に与える悪影響

代表的なものとしては、顎関節症が挙げられます。顎関節症は現代病の代表格ともいわれており、その患者数は年々増加中。顎の違和感や痛みに始まり、重症化すると口が開かなくなってしまうこともある恐ろしい病気です。そんな顎関節症には5つの種類がありますが、そのうちの1つであるI型は、咀嚼(そしゃく)筋と呼ばれる下顎の筋肉を中心として痛みが起こるものが分類されます。歯ぎしり・食いしばりのチェックの部分で触れた「朝起きたときにこめかみのあたりが強張っている。顎がだるい。顎が痛い。どこで咬んだらよいか分からない感じがする。」というのは、まさに顎関節症の症状なのです。もちろん顎関節症と診断されるかどうかは程度によりますが、このような症状が見られる方は、リスクが高いと考えておきましょう。
 

歯ぎしり・食いしばりが「歯周組織」に与える悪影響

歯ぎしり・食いしばりは歯周組織、つまり歯茎や歯を支える歯槽骨(しそうこつ)などにも悪影響を与えます。これが咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)です。具体的には必要以上に強い力で歯を噛みしめることによって、歯と歯槽骨の間にある組織である歯根膜(しこんまく)と歯槽骨にダメージを与え、これらの支えが弱くなった歯がだんだんと揺れるようになってしまいます。この咬合性外傷が進行し、歯が大きく揺れるようになると、歯槽骨はさらにすり減っていきます。歯が「すりこぎ」、歯槽骨が「すり鉢」であるとイメージするとわかりやすいでしょう。歯槽骨は、外からダメージを受けるとどんどん減っていく性質を持っています。このままで放っておくと、最終的にはすりこぎとなった歯を抜くしか手段はありません。なお、咬合性外傷には、一次性と二次性があります。一次性は、歯や歯周組織には病気がなく、噛む力に異常があって外傷につながるもの。二次性は、噛む力には異常がないものの、歯周病などで歯周組織が弱っていることで外傷につながるものです。
 

歯ぎしり・食いしばりが「歯」に与える悪影響

歯ぎしり・食いしばりで歯に強い負荷がかかると、時には歯が割れてしまうこともあります。これを歯牙破折(しがはせつ)といい、特に神経が通っていない歯に起きやすいので注意が必要です。歯が割れてしまうと、その亀裂に小さな隙間が生まれ、そこから細菌感染が始まります。私たちの骨には細菌から逃げるようにみずから形を変えていく性質があるため、細菌感染が進むとどんどん歯槽骨が逃げて(下がって)しまいます。これはすなわち、歯周ポケットが深くなることでもありますので、そこに細菌が住みつきやすくなり、結果的に歯茎に炎症が起こるのです。ここまで進行すると歯を抜かざるをえませんが、歯茎の炎症が起きる最終段階まで歯牙破折に気付かない方は非常に多くいます。
 

歯ぎしり・食いしばりが「全身」に与える悪影響

歯ぎしり・食いしばりの癖があると、筋肉の緊張や凝り、頭痛などの症状が引き起こされるため、どうしても睡眠の質が低下します。すると、体を十分に休めることができず、ストレスの原因になるのです。そもそも歯ぎしり・食いしばりはおもにストレスによって起こるものなので、ストレスがストレスを呼ぶという「負のスパイラル」が起きることになります。
 

☆★☆歯ぎしり・食いしばりへの対策法☆★☆

 
では、歯ぎしり・食いしばりの対策にはどのような方法があるのでしょうか?代表的なものとして3つの方法があります。
 

1. マウスピース

最もスタンダードな方法は、マウスピースの装着です。歯にかかる負荷をマウスピースでやわらげ、歯や歯周組織などにかかるダメージを緩和します。最近では、良い歯ぎしりを誘導するマウスピースもあります。歯科医院に相談すれば自分の顎の形に適した物を作成してもらえますので、気になる方は検査も兼ねて受診してみるといいでしょう。
 

2. マッサージ

筋肉の痛みにはマッサージも有効です。こわばった筋肉をほぐしてあげれば、頭痛などの症状も改善する可能性があります。マッサージをする箇所や適切な強さ・時間には個人差があるため、これも歯科医師に指示を仰ぐようにしてください。
 

3. 貼り紙法

起きているあいだの食いしばりを予防するには、「貼り紙法」と呼ばれる方法を実践するのがおすすめです。これは、目につきやすい場所に貼り紙(目印になるものであれば何でもOK)を貼り、それが目に入ったときに、歯を食いしばっていないかを必ず確認するという方法です。シンプルな方法ではありますが、意識改善には効果抜群!多くの方が、自分がどれだけ無意識に歯を食いしばっているかという事実に驚くことでしょう。手軽に実践できる対策なので、ぜひ試してみてください。

☆★☆気付かないストレスの存在に気付くことが解決の第一歩☆★☆

 
歯ぎしりや食いしばりを根本から改善するには、ストレスに対して正しい対処方法を知ることが大切です。歯ぎしり自体がストレスへの対応策として作用している場合もありますが、放っておけば体にどんどん不調が出てきます。マウスピースなどを活用し、できる限りのケアをすることが必要です。ストレスに悩まされる毎日を送っている皆さん、まずは自分の状態を確かめることからスタートしてみてはいかがでしょうか?