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日本には47都道府県もあるのに、全部行かないのはもったいないなぁ。

というわけで、ひとりで全部行ってみることにした。

目標は月に一度の旅。

青森に行ったついでに秋田にも、なんてことはしないで、

毎月毎月、東京からフラッと行くことにしよう。

月に一度の旅で、47都道府県をまわると4年かかるが、

別に急ぐこともない。

何かを学ぶ、などにはこだわらない「ただ行ってみるだけ」の旅。

無駄だったかどうかは、旅が終わってからわかるんだろう。

 

 

 

 

 

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益田ミリさんは

1969年大阪生まれの漫画家、

イラストレーター、エッセイスト。

四コマ漫画の「すーちゃん」や

「僕の姉ちゃん」などのシリーズが有名。

 

 

 

『47都道府県女ひとりで行ってみよう』は

彼女が33歳の終わりから37歳にかけて

毎月一度、47都道府県のどこかを訪れ、

日本全国をひとり旅で制覇するという

ウェブ連載の企画をまとめたエッセイ。

 

 

 

2002年12月の青森からスタートし、

訪れる順番はランダムで

2006年10月の東京まで。

約4年半以上かけて

宣言通り、見事全国を制覇する。

 

 

 

この本がユニークで面白いのは、

著者がまえがきで書いてあるとおり

“何かを学ぶ、などにはこだわらない

「ただ行ってみるだけ」の旅。”であること。

 

 

 

普通、旅の連載というと

「こんな綺麗な場所を訪れた」、

「こんな美味しいものを食べた」という

その土地ならではの体験を

わかりやすく読者に紹介しそうだが

ミリさんの場合、ガイド的要素が極めて薄い。

 

 

 

念入りな下調べや、

計画的な行動とは無縁。

どっちかというと思いつくまま、

行き当たりばったりのぶらり旅だ。

 

 

 

それでもはじめのうちは、

せっかくの旅行だからと

有名な観光名所を回らなきゃ、とか

ご当地グルメを食べなきゃという気持ちが

著者にも働いている。

 

 

 

だが旅を続けていくうちに

自分が好きでもないものを

無理して味わっても意味がないと悟り、

徐々にこだわりから解放されていく。

 

 

 

そして面白いのは

旅の自慢話がくどくならず

自分をよく見せようという

見栄っ張りさがないところ。

 

 

 

4県目の茨城では

「はっきりいって、もう飽きている」

「どうしよう、

マジでやめてもいいんだけどなぁ。」と

あけすけに語っていたかと思えば、

 

 

 

14県目の鹿児島では

「どうしたことだろう、

ひとり旅が楽しみになりつつある。」と

華麗に手のひらクルー。笑

 

 

 

そして28県目の山形では

「もうひとり旅なんかしたくない。

こんなことやってなんになるわけ?」と

心がささくれ立ちながらも自分を鼓舞し

3月31日に思い腰を持ち上げたり…。

 

 

 

どこにもカッコつけたところがなく、

ありのままに感情を綴る。

そのマイペースな素直さ、

まぁいっか、と思えるおおらかさ。

そんなミリさんの感受性に惹かれる。

 

 

 

旅は学びたまえと主張せず、

ただポンとわたしの前に置かれるだけ。

ふわふわと自分の心と話せる

自由時間である。

 

 

 

初めての場所を訪れたから

普段と違う体験しなきゃとか

何かを吸収しなきゃとか、

そういうことから自分を放っていい。

 

 

 

無理やり意識しなくたって

「旅」というのは、

日常のしがらみからすこしだけ

自分をどこかへ連れてって

新しい気づきをくれるものだから。

 

 

 

 

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ここ最近のブログに書いている通り、

年末年始は福岡を離れて過ごした。

 

 

 

移動中の読書を何にするか考えたとき

なんだか無性に再読したくなって

2019年の1月以来ひさしぶりに

この本を手に取った。

 

 

 

小さな付箋を貼りながら

ひととおり読み終わってみると

5年前に読んでブログを書いた時と

ほぼ同じ箇所に再び付箋を貼っていた。

 

 

 

なかでも心に響いたのは

やはりあとがきのこの文章。

 

 

 

  わたしがこの旅をあらためて振り返って一番強く感じたのは、「47都道府県ひとり旅でもしてみよう」と思える道を、わたし自身が選んで歩いていたんだということである。

  わたしには、ひとり旅に出られない理由がないのだった。

  誰の了解を得ずとも、ふらっと旅に出られる。自分で休む日を決めて、自分のお金を使って、託す子供も持たず、預けるペットも飼わず。ひとり旅に出ようと、ふと、思ったのは、旅に出られる自分だったからなのだ。

 

 

 

「ひとり旅に出られない理由がない」

ストレートなその言葉は、

5年前の当時の私にも

そして現在の私にも突き刺さる。

 

 

 

私は存分にこの本に影響を受けてるから、

これからも旅をするだろう。

それは一人旅であったり、

家族や誰かと一緒にだったり

その時々で様々だろう。

 

 

 

どんな旅をするにしても

”わたし自身が選んで歩いて“きた、

人生の一端の表れの気がすると言ったら

大袈裟だろうか。

 

 

 

どんな旅をしよう、

今年はどんな年にしようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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