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窪美澄さんの作品といえば、

『ふがいない僕は空を見た』を

初めて読んだ時の衝撃は忘れない。

他人の秘密をうっかりと覗いて、

共犯者になってしまったような

もう後戻りのできない焦燥感。

 

 

 

『水やりはいつも深夜だけど』は

なんだかやけに目に留まる、

意味深なタイトルだ。

世間に紛れてそつなく暮らしたいのに

どこかいつも胸の中に引っ掛かりを感じて

生きづらさを抱える人々の静かな物語。

 

 

 

「ちらめくポーチュラカ」

おしゃれな暮らしをブログで投稿し

一目置かれているセレブママ。

しかし周りのママさんたちとの

人付き合いが実は苦手で

気の休まらない日常を送っていたり…。

 

 

 

「サボテンの咆哮」

それまで仕事熱心だったのに

出産を機に変わってしまった妻と

彼女の変化が受け止めきれずに

途方に暮れ孤立する夫。

 

 

 

「かそけきサンカヨウ」

父と、再婚相手とその小さな娘と

四人で暮らしはじめた女子高生。

仲が悪いわけではないけれど

どこか自分の居場所が無い気がして

ギクシャク素直になれなくって…。

 

 

 

「ノーチェ・ブエナのポインセチア」

心臓に病気が見つかり

好きだったバスケットを諦めることを

余儀なくされた高校生男子の

どうにもやり場の無い不満と日々。

 

 

 

そのほか

「ゲンノショウコ」、

「砂のないテラリウム」

などなど。

いずれも植物にちなんだ

タイトルになっている。

 

 

 

どの話の主人公たちも

声にならない悲鳴を

心の中であげつづけている。

読みながら胸がちくちくと痛む。

 

 

 

傷ついていたって顔をして苦しんでたら

誰かが気づいて助けてくれるなんて

人生そんなに甘くはない。

黙ってじっと耐えていたって

ハッピーエンドは安易にやってこない。


 

 

でも、その場所から逃げずに

ちゃんと自分自身と、

周りの人たちと向き合った時、

ほんのすこしずつ日常に変化が訪れる。

 

 

 

植物たちのように

しぶとく根を張って。

 

 

 

 

 

 

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