***
さくらももこの初期エッセイ、
『もものかんづめ』、
『さるのこしかけ』に続く
3作目『たいのおかしら』。
いつも手に取るたびに
この3部作の題名って
ネーミングセンスあるよなぁ
ってしみじみ思う。
さくらももこらしい、
ちょっとした遊び心と
適度なナンセンスさが
いい塩梅にミックスされていて
一度聞いたらなんとなく
覚えてしまうタイトル。
『もものかんづめ』が
ドカンと炸裂するような
ぶっ飛んだ面白さだとしたら
『たいのおかしら』は割合、
地味でシュールな笑いかもしれない。
さくらももこはエッセイを読むと
つくづくこの作者にして
あの「ちびまる子ちゃん」あり!
…と非常に納得してしまう。
この人じゃないと
まるちゃんは生み出せないし
コジコジも生まれなかっただろう。
読めば読むほどに
キャラクターというのは
作者の分身だなと感づる。
さて『たいのおかしら』で
私のお気に入りの編は
「マッサージ師」と
「怠け者の日々」だ。
「マッサージ師」は
さくらももこがマッサージに
なんども通い詰めるあまり、
すっかり揉むコツをその身に体得して
マッサージが上手くなってしまう話。
「怠け者の日々」は
子供のころに勉強をろくにせず、
家の手伝いも全然せずにいたせいで
母親に毎日ガミガミと叱られるも
全く懲りずにぐうたらしてたという
著者の回顧録。
私は不良になったわけでもなく、家で暴力をふるうわけでもなかったのに“怠け者”というだけで親を泣かせてしまったのだ。“怠け”が原因で親を泣かせた人の話など、自分以外にきいた事がない。
母親に口酸っぱく叱られても
右から左の穴へ通り抜け
全く懲りない著者。
子供の頃に散々言われ続け
それでも怠けつづけたというから
呆れを通り越して感嘆する。
そんな作者も
それから数年たち、十八歳から私は働き者になった。家の手伝いこそしなかったが、学校とバイトと漫画を描くのに精を出し、働き続けて今日に至る。
普通叱られたなら反省して
こんなに私は変わった…!と
綺麗にまとめそうなものの、
一切取り繕わずに、
ひょうひょうとした作者。
そういうところが
さくらももこらしいというか、
エッセイならではの面白さである。
▽思春期な学生時代を振り返って
つぶさに心情を描いた『ひとりずもう』も絶品だ。
***