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11月23日、

貴重な祝日だというのに

最低限の家事と読書と昼寝

それだけで1日が終わった。

 

 

 

24日、きんようび、仕事。

 

 

 

25日・26日の週末には

取り立てて予定がなかった。

引越しの後片付けは一通り済んだし

スポーツジムや読書を

ただ毎週繰り返すのは味気ない。

 

 

 

ふと時間の余白ができたことで

無性に岡山が恋しくなった。

次に帰省するのは年末年始かな、

そんなふうにおもっていたのに…。

 

 

 

県外暮らしは初めてでもないのに

こんなにはやく根を上げるなんて

ちょっと恥ずかしい。

おまけに福岡からだと、

まあまあな旅費もかかる。

 

 

 

頭のなかで逡巡した。

福岡に留まるのと岡山に帰るのと。

でもなにを躊躇うことがあろうか?

気づけば気持ちも足も岡山に向いていた。

 

 

 

博多駅から、岡山駅まで

新幹線で約2時間。

 

 

 

 
 
 
「ようこそ晴れの国岡山へ」
ようこそ、自分、
おかえり、自分。
見慣れている駅の光景に
ちょっとホッとする土曜の朝。
 
 
 
この日は仕事で疲れも溜まっていたので
馴染みのお店にマッサージを受けにいったり
好きなアパレルショップに冬服を買いに行ったり、
知人と食事に行ったりした。
 
 
 
マッサージやショッピングって
福岡でもできないわけではない。
けれど、自分が気に入っているお店で
買い物できるのってやっぱ嬉しい。
ただ用事を済ますわけじゃなくて
人に会いに行っていると思う。
 

 

 

 

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日曜日のこと。

 

 

 

 

 
 
 
本好きの知人と
朝ごはんがてらSTAND1−1へ集合。
ベーグルとスープとコーヒー、
窓際に座ると日差しが暑いくらいの朝。

 

 

 

 
 
 
店内にかかっているネオンが
なんだか意味深。。。
DO NOT PAY MORE
THAN $10,000
 

 

 

 

 

 

この日行こうと思ったのは

吉備路文学館と古書店。

 

 

 

岡山に6年半住んでいて、

個人の本屋さんにはあらかた足を運んだ

…と思っていたのだけれど、

実はまだ、気になっていながら

未踏の店が近場に2軒ありまして。

 

 

 

1軒目、「隠書泊(おにしょはく)」。

桃太郎大通りを西川に沿って北上し、

途中で路地を1本曲がると、

少し歩いて左手にその店はある。

 

 

 

 
 
 
 
青いひさしに「古書店 隠書泊」、
暖簾には「岡山で一番小さな古本屋」
 

 

 

 
 
 
 
確かに店の佇まいはこぢんまりとしている。
人が一人通れるだけの幅を残して
壁の両側と中央に本棚があり
びっしりと本が埋まっていた。
 
 
 
店内の突き当たりにレジがあり
少し小高いところに店主が座っていた。
私が訪れた時は二組ほどのお客様がいて
静かに熱心に本を選んでいた。
 
 

 

 
 
 
そこにあることを知らなければ
気づかずに通り過ぎてしまいそうな
静かで地味なお店かもしれない。
でもいかにも町の古本屋さんと行った風情で
私は一度で好きになってしまった。
 
 
 
お会計をしてもらうときに
いつからこちらにあるんですか?と尋ねると
さぁ・・・という感じのリアクションで
「一時期閉めてたりもしたので」と
教えていただいた。
 
 
 
こんな本寸法な古書店が
駅からそう遠く離れていない場所で
ひっそりと生き残っているのが嬉しい。
「隠」という字が似つかわしい。
 
 
 
本棚を隅々まで眺めて
偶然見つけた面白そうな本たち、
購入したのは文庫本4冊。
 
 

 

 
 
右端の「しゃべれどもしゃべれども」は
佐藤多佳子さんの短編小説である
「サマータイム」をこの前読んだばかりで
再読したいと思っていた。
こんなにはやく見つかるとは!ツいている!
 
 
 
のこり3冊は、作者の別作品は読んでいるけど
読んだことがない題名の本だった。
ちょっと一昔前の本ばかりだけど
状態も綺麗で100円なんてラッキー。
幸先の良いスタートだ。
 

 

 

 
 
 
「隠書泊」で本を購入した後、
再び西川の遊歩道沿いにてくてく歩く。
川縁の紅葉が赤色に染まっていた、
燃えるような葉っぱの色。
 
 

 

 

 
 
 
10分ほど歩いて到着したのが
南方にある吉備路文学館。
 

 

 

 



気持ちの良い快晴!



 

 
 
 
開催中の企画展は
「重松清ヒストリー」、
岡山出身で直木賞作家である
重松清さんの60才還暦を記念しての作品展だった。
 
 
しかも11月26日のこの日が
会期の最終日!
 
 
 
ずっと行きたいと思っていたけれど
引っ越しやらで先延ばしになって
なかなか足を運ぶことができず、
もう行けないかと思っていた。
 
 
 
なんとか間に合うことができて嬉しい。
訪れてみての感想を言うと、
非常に、非常に、愛のこもった
素敵な企画展だった。
 
 

 

 
 
 
重松清さんは、
岡山で生まれ育った私にとって
「岡山の作家といえば…?」と聞かれて
まずまっさきに浮かぶ存在だ。
 
 
 
だが、企画展に行って驚愕の事実を知る。
本などの著者紹介を見ると大抵
「岡山出身」と書いているが
生まれただけで、住んでいないというのだ。



重松さんの両親は岡山出身で
父親は運送会社ではたらいており
転勤の多い環境だった。
 
 
重松さんが生まれる時に
母親が里帰り出産をした。
重松さんが生まれたのは間違いなく岡山だが
生まれてから住んでいたのは名古屋だとか。
その後、鳥取の米子や山口にも移り住むが
岡山に住んだことはないという。

 
 
しかし、ご両親の実家が岡山にあり
妹さんも岡山に住んでいることもあり
重松さんが岡山に来る機会は多かったという。
今住んでいらっしゃる東京を除いたら
故郷といえば岡山になるのだと
エッセイにも書かれていた。
 
 
 
早稲田大卒業後、出版社に入り、
フリーライターとして活動。
1991年に『ビフォア・ラン』
1999年に『ナイフ』で坪田譲治賞、
『エイジ』で山本周五郎賞を受賞。
2000年に『ビタミンF』で直木賞を受賞。
 
 
 
ちょうどその頃、
私は小学生〜中学生だった。
次々と話題になっていた重松清さんの本を
ご多分に漏れず読んでいた。
 
 
決して明るい青春小説ではない、
どちらかといえば、
なかなかヘビーな気分で読んでいた気がする。
でも子供の自分なりに
その時読まなきゃいけない本だ、って感じていた。
通過儀礼のような小説。
 
 
 
重松清さんは初期の頃は、
10代を主人公にした小説が多くて
途中から登場人物の
年齢層も上がっていったと思う。
そのせいか、中学生以降はあまり読まなくなっていた。
そしていつのまにか遠のいてしまった。
 
 
でも今回企画展を見て、
あらためていい作家さんだなと感じる。
決してベストセラーだったり
長く残る文学作品のような
小説ではなくてもいい、
その時代に生きた作家だから
書ける作品を書きたいということを
インタビュー記事などで答えていて、
そういうの、いいなって思った。
 
 

『ビタミンF』、
久しぶりに今度再読しようかな。
 
 

 

 

 
 
 
そうそう、吉備路文学館には
『作家記念館ガイド』なるものが売っていた。
全国の文学館や記念館を集めたガイド。
つい、買ってしまった。笑
いろんな文学館に行ってみたい。

 

 

 

 
 
 
さてさてお腹が空いたので
2軒目の古書店に行く前に腹ごしらえ。
『DUBUKO』と言う名のスンドゥブ屋さん。
熱々で出てきてめちゃ美味しい。
 

 

 

 
 
 
そしていよいよ2軒目の古書店、
西川沿いをひたすら今度は南下して
岡山大学病院のある春日町まで。
 
 
 
大学病院が向こうに見えはじめたあたりで

ふと右手を見るとその本屋はある。

 

 

 

 

 

 
 
 
お店の名前は「ながいひる」。

女の子の緑の看板が目印。

ビルの階段を登った先、
マンションの一室のようなところがお店。
 
 

 

 

 

 
 
 
 
この店が、すごかった。
想像以上に、すごく、よかった。
 
 

 

(※お店に許可をいただいて写真をとらせてもらいました)
 
 
 
扉を開けて入ってすぐの光景、
ぱっと一目で、
あ、この店好きだ、ってわかった。
 
 
入るまではとてもドキドキしたけれど
(なんせ2Fにあるお店だし)
なんていうんだろう、入った途端
妙な居心地の良さを感じた。
 
 
 
本棚に近づいてみて理由がわかる、
そうか、私がすきな作家やジャンルが
たくさん揃っているお店なんだと気づいた。
岡崎京子、沙村広明、こうの史代、
みうらじゅん、開高健、…

 

 

 
 
 
荒井良二、佐野洋子、吉本ばなな、最果タヒ、横溝正史
レイモンド・チャンドラー、サリンジャー・・・
 

 

 

 
 
 
本棚がわざとちぐはぐなのも
目線があちこちいって
探す楽しみがあって面白い。
そう、まさに本を探すと言う感じ、
おまけに欲しい本ばかり見つかって
どれを買うか決断に悩んだ。

 

 

 

 

 
 
 
こんなところで枡野浩一の本に出会うとは。
石川啄木のことを綴った『石川くん』、
そして枡野さんの短歌集。

 

 

 

 
 
 
とうとう出会っちゃったよ、
買っちゃったよ〜の開高健の『オーパ!』
ど迫力の表紙、心して読まねば。
phaさんの『しないことリスト』は
タイトルに惹かれて衝動買い。
 
 
 

 

 
 
 
お買い上げ用のバッグにも女の子。

お店の方にお尋ねしたら

開店して10年くらい経つという、

そんなに長くここにあったなんて!

 

 

 

地元の知り合いから何度か

岡大病院の近くにディープな本屋があるよ

っておすすめされたことがあったのだけど

なかなか一人では行けれないと思って

随分と機会をのがしていた。

 

 

 

岡山から引越しすることになって

ようやくいけたなんて皮肉だ。

ここから得た教訓は、

行きたいときにとにかく行け、だ。

 

 

 

 

 
 
 
 
帰りの新幹線でえびめし弁当を食す。
 
 

 

 

 
 
 
日曜の夜に福岡に帰ってきたら
まばゆいイルミネーション。

夜中なのに煌々と明るい。

にぎやかで、人がたくさん。

 

 

 

でも私は、夜は夜らしい、

ひっそりした世界も好きだ。

 

 

 

岡山で買って帰ったものたち。

キノシタショウテンのコーヒーと

蒜山ショコラ(これ本当に美味しい)

 

 

 

 
 
 
 
 
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とあるブログのお仲間さんが、

“岡山の空気が吸いたくなれば

ためらわずに新幹線に乗ることです。”

とコメントをくれていた。

 

 

 

そうだ、引っ越して離れたからといって

しょっちゅう帰っちゃいけないわけでもないんだ、

そう思ったら気が楽になった。

さりげない一言がどれほど

私の背中を押してくれたことか。

感謝しています。

 

 

 



 

 

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