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 必然とは何でしょうか。例えば、もうじきここには、一杯のコーヒーと苺のショートケーキが運ばれてくるわけですが、これを宇宙のはじまりというとやや大袈裟ですが、まあ、それくらいから考えると、幾千のときを越えていまここで出合うということですから、その確率たるやすごいことになります。

 

 

 

 

 

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東京に、

1冊の本だけを売る書店があるという。

 

 

 

必要最低限の広さの1ルーム、

一定の期間に、1種類の本だけを取り扱う。

本屋というより、ギャラリーのような、

本と人とが出会う場所。

店の名前を森岡書店という。

 

 

 

「1冊の本を売る書店」という

究極のコンセプトに惹きつけられた。

その店主が書いたエッセイが

『ショートケーキを許す』。

 

 

 

この本の存在を知ったのは

おかやま文学フェスティバルで、だった。

徳島から出店している本屋さんが

ブースに並べていて、紹介してくれた。

 

 

 

話を聞いただけでなんだか妙に気になって、

1700円もするのに衝動買いしてしまった。

そこでたまたま出会ってなかったら

買っていないし読んでなかっただろう。

 

 

 

エッセイ自体は、実にシンプル。

 

 

 

「自分は、さしずめ、ショートケーキ応援団」

と語るほど、無類のショートケーキ好きの著者が、

 

 

銀座ウエスト本店

タカノフルーツパーラー新宿本店

資生堂フルーツパーラー

銀座千疋屋

帝国ホテル

等々…

 

 

東京のあちこちのケーキ屋やカフェやホテルで

ショートケーキを味わう様を描いたもの。

 

 

 

ショートケーキって、

どことなく「無敵感」ある。

 

 

 

容姿端麗で、甘くて美味しい。

それを口にするとき、

不機嫌なままでいられる人は

まずいないだろう。

幸福の象徴のようなスイーツだ。

 

 

 

そんなショートケーキへの愛を

ちょっと茶目っ気のある文体で語る著者。

上品で素朴な文体が、

ショートケーキの佇まいにマッチして

なんともよい。

 

 

 

しみじみと、

ショートケーキが食べたくなる。

 

 

 

 

 

愛でるとは、文字通り、愛するということ。愛するとは何でしょうか。愛するとは許すということ。ショートケーキを許す。深いな。なんて。

 

 

 

 

 

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