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 それでは今から、私は書きはじめ、あなたは読みはじめる。お互いに、古代のローマ人はどういう人たちであったのか、という想いを共有しながら。

 

 

 

この引用文は、

『ローマは1日にして成らず』上巻の

「読者へ」と題されたまえがきの

締めくくりに飾られた言葉だ。

 

 

 

時代を紀元前まで遡り

ローマとその周辺諸国の歴史に

思いを巡らそうとする読者にとって

なんともグッとくる一言である。

 

 

 

 知力では、ギリシア人に劣り、

 体力では、ケルト(ガリア)やゲルマンの人々に劣り、

 技術力では、エトルリア人に劣り、

 経済力では、カルタゴ人に劣るのが、

 自分たちローマ人であると、少なくない史料が示すように、ローマ人自らが認めていた。

 それなのに、なぜローマ人だけが、あれほどの大を成すことができたのか。一大文明圏を築きあげ、それを長期にわたって維持することができたのか。

 

 

 

著者の塩野七生さんは

まさにこの大きな問いに対し

自ら筆をとり歴史を紐解くことで

ローマ人の民族性や文化を

明らかにしようとしている。

なんとも情熱に溢れている。

 

 

 

『ローマ人の物語』は

新潮文庫から全15巻出ている。

※『ローマ亡き後の地中海世界』

(上・下)を含めると全17巻。

 

 

 

私は高校生の時には

世界史専攻で固有名詞を

暗記するのは好きだったが

取り立てて歴史小説好きではない。

 

 

 

そんな私がどうして

この本を手に取ったかというと

社内の有志で企画した

オンラインの読書会がきっかけだった。

 

 

 

読書会とは一般的に

お題となる本について感想を交わすタイプと

一人ずつ好きな本を持ち寄って紹介するタイプの

大きく2つのパターンがあると思う。

 

 

社内で開いた読書会は後者のタイプだった。

ただ本が好きという共通点で集まり

ほとんどが「初めまして」状態の

オンラインイベントだった。

 

 

 

そのとき参加者の一人が紹介してくれたのが

『ローマ人の物語』シリーズをだった。

どんな人たちが集まるかわからない暗中模索の中

正統派な歴史本を初っ端から出してくるとは!と

私は驚きと期待と興奮でクラクラした。

 

 

 

ただど定番な歴史物を出したというより

おそらくその人にとってこのシリーズは

「とっておき」な作品なのだろう。

誰かにとってのそういう本を

私は自然と読みたくなる。

 

 

 

読書会で知ったのは21年の8月、

上巻を読んだのは22年2月、

それから約1年経過し…

(月日が経つのはなんと早いことか!)

下巻を読み終わったのが23年の3月。

 

 

 

1冊あたり200ページほどの

あっさりした文庫本だ。

ゆっくり読むにしたって

限度があるやろ…‼︎苦笑って感じだが

いざ読み始めるとなかなかに手こずった。

 

 

 

というのも、物語ではなく

歴史解説書のテイストで

史実に基づいて客観的に書いてあるため、

読んでいて没頭する感じではないのだ。

(理路整然として教科書に似ている)

 

 

 

何十年、何百年の壮大な歴史を

わずか数十分、数時間で

さらっと読むのはなんだか違う気がして

手こずる自分も楽しみながら、

時間がかかるままにコツコツ読んだ。

 

 

 

ローマは紀元前753年に建国され、

前270年にイタリア半島を統一する。

『ローマは1日にして成らず』(上・下)は

この500年間を取り上げている。

 

 

 

そうそう、先日読んだ

シェイクスピアの戯曲

『トロイラスとクレシダ』の

題材であるトロイ戦争も

上巻には出てくる。

 

 

 

今のような1年に一巻の読了ペースでは

15巻読むのに15年かかることになる。

それはさすがにごめん被りたいが

ジュリアス・シーザーが出てくる時代まで

あとに続く巻も地道に読んでいきたい。

 

 

 

読書の道もまた、

1日では到達し得ないものだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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