漢方薬の目的は体質改善です。なので、残念ながらこれだけを飲めばやせるというような魔法の漢方薬はありません。摂取する炭水化物を減らすなど自己努力の上で、体質改善の漢方薬で痩せていくという感じになります。


漢方では、肥満を脂肪太りの実証タイプと水太りの虚証タイプに分けて考えます。


どちらのタイプも食べ過ぎや運動不足を解消するといった生活改善が基本となりますが脂肪太りは体内に毒がたまっている状態と考えますので、身体の熱を冷ます漢方薬が効果的です。


一方水太りは、体内に余分な水分がたまっている状態と考えますので、水分を排出するような漢方薬が効果的です。



実証タイプの方:食べ過ぎを防ぐほか食事時間の改善を


実証タイプの方は脂っこいものや甘いものを食べ過ぎるほか、食事時間が不規則なことが原因で肥満になりがちです。

身体に熱をため込みやすく、便秘がちで暑がりの傾向があります。

食事時間など、食生活を見直すほか、適度な運動を心がけましょう。

こういう方にお勧めの漢方薬は防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)です。

防風通聖散は便秘や肩こりにも効果的です。


防風通聖散を飲んだけどだめだったという人には、大柴胡湯(だいさいことう)があります。

大柴胡湯は、脂質の代謝を改善し、便秘や耳鳴り、肩こり、みぞおちのつかえなどにも効果があります。


このほかにも桃核承気湯(とうかくじょうきとう)もあります。

桃核承気湯は、血のめぐりをよくして不安やイライラを鎮め、過食を防ぎます。また便秘や肩こり、のぼせなどにも効果があります。


また柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)は気分を落ち着ける生薬が配合されているので、神経の高ぶりを沈めて過食を防ぎます。


女性の方で上半身はのぼせるが、手足は冷えるという方には桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)もお勧めです。桂枝茯苓丸は血行をただし、上半身ののぼせや手足の冷えを改善し、肩こりやめまいなどにも効果があります。月経不順や月経困難症がある方には第一選択薬となります。


水分循環を改善し、水太りを解消する五苓散(ごれいさん)は実証・虚証を問わずに使うことができます。



虚証タイプの方:胃腸の機能を高めて筋力をつけましょう


虚証タイプの方は、体内に余分な水がたまった状態です。

むくみやすく、手足が冷える傾向にあります。

食物繊維が豊富なものをよく噛んで食べて胃腸の働きを高め、身体を冷やさないようにしましょう。

筋力をつけて基礎代謝を上げる運動も有効です。

おすすめの漢方薬は防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)です。

防己黄耆湯は色白でむくみやすく、汗が出やすい人に、水のめぐりをよくして疲れや痛みを和らげる効果があります。


また口がかわき、尿が少ない人には五苓散を使うこともできます。

五苓散は水分循環を改善し、水太りを改善します。



いずれにしても、漢方薬を飲んでいるからもう大丈夫と思わず、漢方薬は体質を改善するのであって、生活習慣や食習慣を改善する努力があって、余分な体重を減らすことができるということを忘れないでください。