教科書的には、避妊しないで2年妊娠しないと不妊症とされています。正常性機能のカップルでは、3か月で50%、6か月で70%、1年で85%が妊娠します。

実際に1年妊娠しない場合は、不妊検査・不妊治療を始めた方がよいといわれています。


不妊のカップルは10組に1組といわれていて、不妊に悩むカップルは多いようです。

原因については、男性不妊と女性不妊の割合は1:1といわれています。しかも、男性不妊治療は難しい場合が多いようです。


最近は体外受精などのART(assisted reproductive technology)が進み、広がっていますが費用や精神的な面での問題が多いようです。


漢方だけで不妊を完全に解決することは、当然のことながら難しい話です。生殖器の奇形や卵管不妊など手術が必要なものについては、漢方はお手上げです。


しかし、術後のフォローに漢方の出番もあり得ますし、できるだけ自然な方法で不妊の解決をという方には、やはり漢方を試してみてもよいかと思います。


まず女性不妊に対して、第一に用いられるのは当帰芍薬散です。

この薬は保険の適用があり、不妊症の保険病名で処方できます。

虚証の方に対して、医師が処方するのはまずこの薬になると思います。


当帰芍薬散の作用機序としては、視床下部のLH-RH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)の分泌促進による視床下部ー下垂体系への活性化が確認されています。


当帰芍薬散で効果がないときには次のような処方も考えられます。(保険適用外もあります)


まず実証タイプの方、月経不順や月経痛があり月経中に血塊があるような方には、桂枝茯苓丸が考えられます。

胃腸が弱く、月経の終わりころにかけて月経痛のある方は、当帰建中湯が合うかもしれません。

胃腸虚弱の方には六君子湯が考えられます。胃腸が弱いと妊娠を維持する力が低下するため、胃腸を丈夫にして妊娠に耐えられる母体にするためです。

イライラ感の強い方では加味逍遥散が効果があるときがあります。

黄体機能不全・冷え性などの場合、LH-RHの分泌を促進させる効果のある温経湯が用いられることもあります。


一般的な話ですが、不妊症の女性には虚証の方が多いようです。また、実証の女性の不妊カップルには、男性の方に問題があることが多いようです。(あくまで一般論です)


男性不妊には、補中益気湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、八味地黄丸、十全大補湯、柴胡加竜骨牡蛎湯などが使われます。


いずれにしても、薬に頼るだけでなく、規則正しい生活、食事、睡眠、運動、過度のストレスをためないなど、まずは日常生活を整えることを心掛けてください。