生薬である芍薬は筋肉の緊張をやわらげて痛みを除去する作用があります。
通常は芍薬甘草湯として処方されます。ここで甘草は芍薬の筋弛緩作用を強める働きがあります。
芍薬甘草湯は、実証・虚証に関係なくいずれのタイプの人でも使うことができます。
足や背中の筋肉のつりによる激しい痛み、生理痛などに効果があります。
痛み止めといえばよく使われるものにロキソニンがあります。
最近は、病院に行かなくても薬局・ドラッグストアなどで手軽に購入できるようになりました。
ロキソニンはどうして痛みを取り去るかについては、芍薬とはだいぶ異なります。
まず、筋肉の異常な緊張によりプロスタグランジンという痛み物質が作られます。
このプロスタグランジンが炎症を引き起こしたり、痛みの情報を脳に伝えます。
ロキソニンはこのプロスタグランジンが合成されるのを妨害します。
これによって痛みや炎症がでなくなり、痛みが抑えられるのです。
ただ、プロスタグランジンができなくなっても、痛みの原因となる筋肉のつりなどはそのままです。
したがって、ロキソニンの効果が切れる4時間後に再び痛くなってくるので、痛みの原因が続く限り4時間ごとにロキソニンを飲む必要があるのです。
これに対して、芍薬は痛みの原因である筋肉の異常な緊張を緩和させます。
つまり芍薬は痛みの原因そのものを取り除くのです。
とはいえ、痛みを抑える力は圧倒的に ロキソニン>>>芍薬です
そこで、当帰芍薬散という漢方薬の登場です。
当帰芍薬散は、芍薬以外に当帰など様々な生薬が配合されています。これらの配合された生薬の働きによりホルモンバランスを整えるなど、そもそも痛みの出にくい体質に変えることになります。
つまり、ひどい生理痛に悩んでいるかたも、当帰芍薬散の服用を続けることによって、そもそも生理痛が発生しない体質に変わっていくのです。
ただ、そうはいっても体質の改善は一朝一夕にはできません。
通常は1日3回、2~3か月くらい続ける必要があります。
いったん体質が改善されてしまえば、もう服用の必要はありません。
それでも痛くなったというときには、痛くなった時に芍薬甘草湯を服用してください。
当帰芍薬散については注意事項があります。
それは、この漢方薬は虚証の人にのみ適用があるということです。
虚証の方の特徴をいくつかあげると
夏でも熱いお茶やホットコーヒーなどを好む
脈が沈んでいる(弱い)
舌の裏の静脈がよく見えない。
(鏡で舌の裏側を確認してください)
こういう方は当帰芍薬散の証の人です。
反対に、いつものぼせた感じで冷たい飲物が好きなど、あるいは鏡で自分の舌の裏側をみて、2本の静脈がくっきり見えるというような方は実証です。
実証の方は、当帰芍薬散ではなく桂枝茯苓丸という漢方の証になります。
桂枝茯苓丸については後日お話しする予定です。