今回は、金匱要略に記載されている温経湯(うんけいとう)という漢方薬について説明します。


温経湯の証については次のように記載されています。


問  婦人が50歳ころになって下痢し、数十日もとまらず、夕方になると発熱し、下腹が張ってひきつり、手掌がほてり口唇が乾燥するのはなぜか。


答  これは流産などによって下腹に瘀血が滞り、月経不順になって起きる病気である。口唇が乾燥し、手掌がほてることによって瘀血があることがわかる。温経湯が主治する。


温経湯

呉茱萸(ごしゅゆ) 当帰 川芎 芍薬 人参 桂枝 阿膠 牡丹皮 生姜 甘草 半夏 麦門冬


ここであきょう【阿膠】とは漢方薬に用いる生薬(しょうやく)の一つ。動物の皮や骨を煮て作った膠(にかわ)のこと。止血・利尿作用などがあります。


本方は下腹が冷えて妊娠しにくい時や、不正出血、月経不順にも効果がある、とあります。


本方の決め手は手掌のほてりと口唇の乾燥です。歳は50歳とは限りません。手掌の角化や不妊などによく使います。また血虚のために下痢し、夕方発熱するときにも使います。