金匱要略(きんきようりゃく)の婦人雑病の章にとりあげられている漢方薬についてお話しします。

今回は半夏厚朴湯です。


金匱要略には、婦人の病気にというものは様々に変化するから脈の陰陽の虚・実などを十分に区別して鍼・灸・薬で治療すればかなり重症のものでも治るとあります。


半夏厚朴湯に関する記述については、のどに炙った肉片でもひっかかったような感じの場合は半夏厚朴湯が主治するとあります。


一般に半夏厚朴湯の目標は、気分がふさいでのど、食道部に異物感があるときにもちられますが、必ずしもこの症状がなくても気鬱のものに広く用いられます。


患者さんの訴えを聞くと、のどが詰まるのに吐き出せない、気持ちが落ち込んで食欲がない、不安、不眠、動悸、吐気、咳などを訴えることが多いです。


適応例としては、不安神経症、神経性胃炎、つわり、咳、嗄声、不眠、更年期障害、うつ状態などです。


半夏厚朴湯の構成生薬は、半夏(はんげ)、厚朴(こうぼく)、茯苓(ぶくりょう)、蘇葉(そよう)、生姜(しょうきょう)です。


半夏はサトイモ科カラスビシャクの球茎の外皮を除いて乾燥したものです。去痰(きょたん)、鎮吐(ちんと)、鎮静などに効果があります。


厚朴はモクレン科カラホオノキや凹葉ホオノキ、ホオノキの樹皮や根皮を乾燥したものです。体を温め、緊張や痛みを緩和させる作用をもちます。


茯苓はサルノコシカケ科のマツホド菌の菌核を乾燥し外皮を除いたものです。尿細管の再吸収を抑制するため利尿作用が高く、ミネラル類(Na、K、Clなど)の排出量が増加します。 病後の体力増強作用をもち、薬の巡りを良くするとも信じられています。


蘇葉は、シソ科シソの葉を乾燥したものです。体を温め、停滞しているものを動かし、発散させる作用をもちます。


生姜は、ショウガ科ショウガの根茎です。生のショウガを「生姜」、蒸して乾燥したものを「乾姜」といいます。また、そのまま乾燥したものを「乾生姜」といいます。体を温め、新陳代謝機能を高める作用をもちます。主成分のジンギベロールは血小板の凝集を妨げます。また、軟骨を破壊する酵素の生成を抑制する効果も認められています。