【吹雪】(後編)
先輩に誘われて美容師2年目の夏休みに剱岳に登った!
剱岳を目前に、そこにはありえない光景が広がっていた!
【前回の記事】
そこには前剣(まえつるぎ)と剱岳(つるぎだけ)を結ぶ検問があったのです
3メートルくらいの長さの通り道です
足場の幅は30センチで鎖が手の高さに岩盤に打ち込まれていたのです
「ここ通るんだ~~!」
アドレナリンが、でたついでに期待と不安が交差した
先輩がやっと追いついて行った
「なんじゃ~ここ?????」
「無理無理却下!ここはハードル高すぎでしょう~~!」
行く気満々だった俺も怖くなった
そこにおじいちゃんと25歳くらいの孫が現れた!
「あんたらいかんのか?いかんなら先に行くよ!」
おじいちゃんは慣れた手つきで鎖場をうまく使いひょうひょうと向こう側に渡った!
孫は鎖場と足場を使わず、鎖場の上を歩いて渡った
まるで俺たちをあざ笑うように渡った
「チクショ~~あのメガネ野郎~~完全に挑発してますよ!ケンカ売ってますよ!どうします?」
「あれはすごい!一歩間違ったら谷底だ!だから、行かない!帰ろう!十分でしょここまできたら!」
正直!ホッとした!
足はがくがくだった
そして、お昼過ぎに剣午前小屋に戻ってきた
ラジオからスティングの『イングリッシュマン イン ニューヨーク』が流れていた
曲を聴きながらカレーを食べた
本日は日が暮れる前に下山して、室堂までの小屋まで一気に降りることが次のポイントだった
剣午前小屋でのお昼タイムも終わり、不思議なことにあまり疲れはなかった
天気も最高によく、山からでているパワーをいただいている感じだった
バカチョンカメラでパノラマ風に写真を撮った
たどってきた立山縦走を見上げながら、よく歩いたと感心しながら大満足な気分になった
ポイントの室堂には、たくさんの人がいた
17:00くらいに山小屋について、同部屋の人が1人増えた
その方の話を聞いてまたまた驚愕した
「今日おれクマに遭遇したんだ!命からがらここにたどり着いたんだ」
もう目が点だった!
再び断崖絶壁の恐怖を思い出し足がガクガクした
「遭遇してどうしたんですか?」
「クマが前方に突然現れて、突進してきたんだ!逃げる暇なんかね~からもうダメだと思ったよ」
「それで・・・」
「それでリュックをしょってからそのまま後ろに倒れたんだ」
「・・・・」
リアルすぎて声が出なかった
「そこにクマが上から乗ってきたんだ!
もうダメだと思ったけど、ひっくり返った拍子の右足がクマの腹に当たって、ちょうど巴投げみたいにクマを投げたんだよ」
「本当運がよかった!投げた先が崖だったから、谷底にクマが落ちていったんだ!だから、かすり傷もなかった・・・。」
クマもでるんだ~~っとまたまた声が出なくなった。山はこわいでも日頃体験できないことできるし、絶景を何度もみれると思った
室堂で一夜を過ごし、3日目はバスで富山にでた
お昼タイムはその辺のデパートのレストランで海鮮丼を食べた
これがまた大盛りで白エビ、マグロ、タコ、イカとてんこ盛りすぎて600円ぐらいだった
美味すぎた!
そして、東京までの直行便のバスに乗ってこの度の終わりだった。
バスの停車する音で目が覚めた
どれくらい寝たのか?
行きの夜行バスに買ったばかりのウォークマンを忘れたことを思い出した
ウォークマンがあれば、耳を楽しませて、この退屈な時間を潤わすことができるのに・・・。
バス再び出発した高速が渋滞に入って、止まったり、動いたりを繰り返していた
耳をまぎらわすためにラジオが流れていた
「19:00のニュースです。」
ニュースが始まった
そのニュースの内容を耳で流しながら聞いていた。
「????」
「今、たくさん人が死んだ!って言った?」
ニュースの内容は登山者が登山中に吹雪にあって、たくさん人が死んだ内容だった・・・
その場所が昨日まで俺たちが歩いた立山縦走の雄山から剣午前小屋の間だった
耳を疑った・・・・
あんな見晴らしのいい場所で死人が出るなんて、ありえないと思った‼︎
生存者の話を後でニュースでみた
急に天候が悪くなり、どこにも避難できなく、体力の限界でうずくまり動けなくなった。命からがら小屋にたどり着いた人の話だった
吹雪くと1メートル先も見えなくなった
亡くなった方のご冥福をお祈りした
今回の旅が2日連れてたらと思うとゾッとした。
運がいいのか!悪いのか!
人生は何がおこるかわからない、死んだら終わりだと思った‼︎
今ここに生きてることに感謝して精一杯生きようって思った‼︎
多謝