先日、「浮雲心霊奇譚」の単行本の担当のIさんが、異動になりました。
担当に就いたのは、多分、三年くらい前だと思います。
「火車の残花」「月下の黒龍」の二作品、ご一緒させて頂きました。
Iさんは爽やかで、柔らかい印象のある青年という感じでしたが、その見た目に反して、とにかく細かい人でした。
細部が気になって、気になって仕方ない。
次から次へと、重箱の隅を突くような指摘をしてくるのです。
どんな指摘を受けたのかは割愛しますが、あまりの細かさに、苛々したことが多々ありました……笑
的外れな指摘が飛んできたときは、殺意すら覚えました 笑
ただ、Iさんは、決して私の揚げ足を取って私を苛めていた訳ではありません。
読者にいい作品を届けたいという純粋な想いから、真摯に向き合い、徹底的に拘っていたのです。
妥協することができたはずなのに、それを拒み、自分自身を追い込みながら、作品創りに邁進するなんて、誰にでもできることではありません。
編集者の鏡のような人です。
だからこそ、私も苛々しながらも、要求に応えようと必死に原稿を直し続けました。
長い作家生活の中で、無意識に慣れや甘えが生まれていたことに、気付かされたような気がしています。
Iさんと何度も、何度も推敲を重ね、「火車の残花」は、連載時とは別物に仕上がりました。
Iさんには、私の新しい一面を引き出してもらいました。
神は細部に宿る――という言葉がありますが、Iさんと作品創りをしたことで、それを改めて痛感することができました。
Iさんも仰っていましたが、20周年をご一緒できなかったのが残念でなりません……。
三年間、本当にありがとうございました!!
新しい部署に行っても、Iさんの緻密な仕事ぶりは活かされることでしょう。
暑い日が続きます。くれぐれもご自愛ください。
また、いつかお会いできる日を、心待ちにしています――。
「火車の残花 浮雲心霊奇譚」の文庫版は7月21日発売です!!