先日、Twitterでも告知しましたが、「火車の残花 浮雲心霊奇譚」の文庫化が決定しました!!
発売は2023年7月21日!!
(地域によって異なる)
ゲラチェックは終了し、私の作業は全て完了しています。
今は、装丁や販売戦略など、諸々の準備を進めている段階ですので、続報を楽しみにお待ち下さい。
と、これでブログを終わらせてしまうのも味気ない。
せっかくなので、「火車の残花」の裏話を一つ――。
本作は「火車の残花」というタイトルにもある通り、妖怪の火車がモチーフとして扱われています。
作中に記載されていますが、火車という妖怪は、罪人の死体を奪う妖怪で、本作のテーマとも合致しているのですが、最初から火車だったわけではありません。
小説すばるに連載時は、「彼岸の口裂け女」というタイトルで火車など影も形もない……。
連載から書籍用に改稿する課程で、モチーフとして扱う妖怪が変更になったのですが、そこには紆余曲折がありました。
連載原稿を書籍化するにあたり、担当のI氏から、モチーフの妖怪を変えて欲しいという要望がありました。
理由を訊ねると、口裂け女は、現代的な妖怪だと言う。
ふむ。言われてみれば、確かにその通りかもしれない。昭和の匂いがぷんぷんする。
そこで、モチーフにする妖怪を、「濡れ女」に変えて原稿を書き直しました。
なぜ、「濡れ女」だったかというと、当時、私は「仁王2」というゲームをプレイしていて、敵として「濡れ女」が登場するのだが、こいつがめちゃくちゃ強かった。
急に飛び出してきて、ぎゅうぎゅうと身体を締め付けられ、落命するのである。コントローラーを投げ捨てたのは、一度や二度ではない。その恨みを作品にぶつけたかたちです。
しかし、担当編集さんから、「濡れ女」は、妖怪として知名度が低いとの指摘を受けた。
確かに「仁王2」の中でも「濡れ女」はボスではなく、その辺をうろついている雑魚敵でした。
知名度が低くても、作品の力でメジャーに押し上げることも可能なのだろうが、それが出来るのは、一部の天才もしくは、その妖怪に強い思い入れのある場合だ。
私のように、ゲームからの思いつきで登場させたのでは、さすがに、そう上手くはいかない。
そこで、もう一度、モチーフにする妖怪について考え直すことになったのだが、単にメジャーな妖怪を登場させればいい――というものではない。作品のテーマにマッチしなければ、その存在が浮いてしまう。
ああでもない、こうでもないと、考えれば考えるほどに、深みに嵌まっていく。
私は、作品に迷ったとき、書棚を眺めるようにしている。ぼんやりと背表紙を眺めていると、そこから閃いたりすることがあります。
ここまで言えば、私が何から「火車」を引っ張り出したのか、容易にお分かりだろう。
そう。ミステリー作品の傑作! 宮部みゆき先生の「火車」が目に飛び込んで来たことから、「火車」をモチーフにすることを思い付いたのです。
成り行きでしたが、「火車」は、最初からそうであったかのように、綺麗に作品にマッチしました。
預かり知らぬこととは思いますが、宮部みゆき先生――ありがとうございます。
果たして、どんな作品に仕上がっているのか??
発売まであと少し――。
待て!! しかして期待せよ!!