さて、本日ご紹介する本は、天祢涼先生の「Ghost ぼくの初恋が消えるまで」です。
10歳の少年、生方理人の前に、連続殺人事件の被害者となって命を落としたはずの6歳年上の幼馴染み、四条いのりが現れた。
幽霊となって彷徨うことになったいのりは、ただ一人、彼女の姿が見える理人に求めた。
理人にとって、いのりは初恋の相手である。
彼女の命を奪った犯人は許せないが、もし犯人が捕まれば、いのりは成仏して消えてしまうかもしれない。
複雑な心情を抱きつつも、理人はいのりとともに事件解決に向けて動き出すのだが……。
本作は、物語を事件が発生した理人の10歳当時だけでなく、13歳、16歳と作中で成長していく過程が描かれています。
しかし、幽霊であるいのりは死んだ当時の16歳のまま……。
自分の時は動いているのに、彼女の時はずっと止まったまま。
本来なら、決して越えることのない年齢の壁を、越えていってしまう。
時間の流れの中で、理人の環境は大きく変化していく。
だが、それでも変わらないものがある。
それは、いのりへの想い。
うん。設定だけで泣けてきますね……。
この段階で読みたくなった人も多いのではないでしょうか??
もちろん、設定が面白いだけではありません。
ライトな読み味にしつつ、決してそれだけに留まらない。
短い文章の中に、考え抜かれた心情描写が凝縮されているからこそ、読後に受ける印象は、とても深いものになります。
多くを語らずとも、脳内に鮮烈な印象を残してくれます。
ネタバレになるので、多くは語れませんが、ラストに明かされる真相は、すっと心の中に入り込んできて、読者の涙腺を決壊させることでしょう。
ミステリーであり、少年の成長物語を描く青春ものであり、そして儚いラブストーリーでもある。
心洗われる一冊です。
気になった方は是非!!
余談ですが、物語に登場してくる向ヶ丘遊園、登戸近辺は、以前に住んでいたことがあり、親近感が湧きました。
久しぶりに、あの辺りをぶらぶらとしてみようかな。
神永学のmy Pick