シェイクスピアの「マクベス」(世界文学大系より)
そう、世の旦那を震え上がらせる「マクベス夫人」。
いや、個人的には好きですけど、…はたから見てるだけなら。
彼女のセリフで大好きなものがあるので。
スコットランド王マクダフを亡きものにし、自分が王となる野望を持っているマクベス将軍。
しかし何も知らないマクダフ王は、マクベスの功績をたたえ、コーダーの領主に任命する。
いったんは王暗殺を考えていたマクベスだったが、王の恩賞に心がゆれる。
そんな夫をマクベス夫人が叱咤するセリフ。
◆
さっきまで着けていらした望みは酔っぱらっていたのですか?
あれから眠りこけてしまって、やっと今眼を覚ましてみると
前は平気だったものが
今は見るだけで顔が真っ青になる?
これからはね、あなたの愛情もそんなものだと思わせていただきます。
わたしはね、赤ん坊に乳を飲ませたことがあります。
自分の乳房をふくんでいる赤ん坊が
どんなにかわいいか良く知っております。
しかし、やろうと思えば、
わたしの顔を見上げてニコニコ笑っている赤ん坊の
やわらかい歯ぐきから乳首をひったくって
その脳みそを叩き出して見せます。
さっきのあなたのように、やろうと誓った以上は。
◆
…コワイw
こんな調子で嫁に詰め寄られたら、ちびりそうです。
もうひとつ、お気に入りの夫婦漫才(?)シーンがあって。
なんとか王殺害を決行したマクベス夫妻。
マクベスの手には王の血が付いており、
マクベスはおおいにうろたえる。
「どこかで声がした!
『もう眠れないぞ!――マクベスは眠りを殺した!』
と声がした!」
ちょっと戸を叩かれても
「どうしたというんだ、おれは?
音のするたびに飛び上がるこの手は?
ああ! 眼の玉が飛び出す。
大ネプチューンの支配する
大海の水を一滴残らず使えば
この血を洗い落とすことができるだろうか?
いや、それどころか、このおれの手が
はるかな大海原を真っ赤に染めて
緑も真紅に変えてしまうだろう!」
と大げさにガクガク震える始末。
それを見たマクベス夫人はまた叱咤。
「そんなのちょっとの水があれば消えてしまいます。
なんでもありませんわ!」
もはや悲劇ではなく笑うとこだろう。
でも、このセリフでマクベス夫人がどんだけコワイ女か、
観客はいっぺんでわかる。
キャラクターがイキイキしてるというか。
小説書く上で、セリフの強さは勉強になります。
…それにしても、よくまあマクベスは夫でいられるなあ。
草食系だったのかなあw