「お兄ちゃんなんだから、弟をいじめないの!」
ちがうよ! 弟が悪いんだよ。
こいつが僕の大事なラジコン壊したんだ!
誕生日に買ってもらった、僕のラジコンだったのに。
勝手にさわって、壊したんだよ。
だから、僕…
「お兄ちゃんなんだから、それくらい我慢しなさい。まだ弟は小さいんだから、しょうがないでしょ」
◆
「お姉ちゃんなんだから、早く妹に貸してあげなさい!」
どうしてなの! 私が今出してきた、私のお人形なのに。
妹は、さっきだって私が遊んでたぬいぐるみを欲しがって
私、遊びたかったのに貸してあげたんだよ。
私が遊ぼうとすると、いっつもこの子が私のおもちゃを取っちゃうんだよ。
だから、私…
「お姉ちゃんなんだから、それくらい我慢しなさい。まだ妹は小さいんだから、しょうがないでしょ」
◆
なんでぼくの話を聞いてくれないの?
なんで私が怒られなきゃいけないの?
僕、壊されたのに。
私、取られたのに。
どうして我慢しなきゃいけないの?
◇
ひょっとしたら、この子たちは、我慢したくないのではなくて、
親につらい気持ちを解ってもらいたいのかもしれません。
「そうだよね、大事なラジコン壊されたら、おこるよね。悲しかったんだよね」
「そうだね、おもちゃを次から次へと取られちゃったら、遊べないよね。我慢してたんだよね」
それだけで、救われる気持ちもあるかもしれません。
そして気持ちを認めてもらえるのって、大人でも、きっとうれしい。
子育てや家事に追われて、「お母さん」モードまっしぐら。
ちょっと「女」忘れちゃって、最近独身の友達がまぶしく見える…。
そんなとき
旦那さんが、「いつも家のことありがとう」なんていいながら
ケーキ買ってきてくれたら。
おまけに慣れないくせに、メッセージカードまで書いて。
ひさびさ名前で呼ばれたら。
◆
朝早くから、夜遅くまで働いて、会社では言いたいことが言えず、
おまけに最近不景気で給料下がって、
お小遣い上げてなんて言えないお父さん。
独身時代だったら好きなだけ買ってた趣味のモノだって、
今は雑誌で眺めるだけ。
そんなとき
奥さんが、こっそりためたへそくりで
「これ、ずっと前から欲しがってたよね。結婚してから、買うのあきらめてたもんね」
なんて言ってプレゼントしてくれたら
◆
自分を慕ってくれる存在。
自分の気持ちを解ろうとしてくれる存在。
家庭の中に、味方がいる安心感。
独りじゃない。
それは支えになると思います。
こどもだって、きっとそう。
お兄ちゃんになったその日から、
お兄ちゃんは「お兄ちゃん」を頑張ります。
お母さんを独り占めできなくなったときは、やきもちやいたけど、我慢した。
おもちゃだって、弟にゆずった。
お母さんは、そんなお兄ちゃんの頑張りに、
甘えてませんか?
もし、「お兄ちゃんなんだから~」といって、
その子の気持ちを封じてしまったら、
家の中にその子の味方がいなくなってしまいます。
お母さんだって、お父さんだって、
家の中で独りぼっちはつらいと思います。
お兄ちゃんには、
お姉ちゃんには、
言い分があって、
でも親にそれを聞いてもらえなかったら、
独りぼっちです。
つらいことも、ねぎらってもらえれば頑張れるように、
彼らも、親につらさを解ってもらえれば、
「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」を頑張れるかもしれません。