みんなができることって、じつは重要なことなんだと思う。
仕事も、考え方も、生きることも。
たとえば、「自分にしかできない仕事がしたい」って思うことがある。
「自分にしか書けない小説を書きたい」
「君じゃなくっちゃ、この仕事はできない」
「君にしか頼めないことなんだ」
ちょっと、まんざらでもないって思ってしまう。
なんだ、自分がいないとだめなのかあ。
自分にしかできないって、特別だよな。
でも。
待て待て。
そんなこと、ないだろ、きっと。
きっと、私がいなくなっても、代わりはいるはず。
たしかにちょっとは困るかもしれない。
でも、私がいなくなっただけで、会社がつぶれるわけないだろ。
っていうか、そんな程度でなくなる会社なら、そもそも
社会にとって、あんまり重要ではないってことなんじゃあないか?
反対に。
代わりがたくさんあり、誰でもできる、ありふれた仕事こそが、社会にとって
とても大事な存在なのではないだろうか。
いっぺんにいなくなったら大混乱になっちゃうから、
いつだれかが抜けてもいいように、たくさんその仕事をしているんだと思う。
たとえば、すんごい名医がいたとする。
彼の神の手じゃあないと、患者が救えない。
彼は、きっと、自分が手術をするかたわらで、
後継者を育てるべく、若い医師の指導もしているだろう。
すこしでも、救える患者の数が、増えるように。
自分が引退したときのため。
自分が執刀できなくなった時、
苦しむ患者に向かって
「自分はもうできないんで、手術で治せる医者は、もういません。残念ですが、さようなら」
と、無責任なことを言わないように。
代わりが必要なんだ。
自分じゃあない誰かが。
それは多い方が、きっといい。
だから。
ありふれた仕事をしているからって、ツマンナイことなんかない。
あなたの仕事はとても重要。
誰にでもできるからって、自分の代わりはいくらでもいるからって、むなしくなることはない。
社会にとってなくてはならないからこそ、穴を作っちゃいけないんだ。
これから就職するひとも、
個性がないって、さびしがるひとも。
どうか、自分に胸を張ってほしい。
特別な方が、あんまり重要じゃあないってこともあるんじゃないかな。
大事だからこそ、たくさんなんだってことも。
きっとある。