光のち、喪失 | あきれカエルの頬かむり

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今日、どうしても買わなきゃならないものがあったので


よこなぐりの雨の中、車を走らせました。



無事買い物を済ませた帰宅途中に、前方の空の一部が妙に明るい事に気がつきました。


「夕日?」


一瞬考えましたが、方角的に進行方向とは逆に日は落ちるはず。


建物の合間から見えたのは、


輝く虹でした。


アーチ状ではなく、ちょっと寸胴な短冊のような形です。


それは日の光を受けて、今までに見たどんな虹よりも明るいものでした。


良く見ると、うっすらと、同じ形の虹が近くに浮かんでいます。


なんだかわくわくした気持ちになって、


家へ帰るなり急いでデジタルカメラを片手に外へ飛び出しました。



どこかいい場所はないか。


ああ、電線が邪魔だ。


今度は家の屋根に隠れてしまう。


そうこうしているうち、みるみる虹は輝きを失い


空気に溶けていくように白んできました。


ああ、消える。


私は虹へ向かって進み続けました。


つかめるものなら、腕を伸ばしたい。


とどめておきたい。


このまま、ずっと。


変わらぬように。



結局、カメラに写すことはできぬまま


虹はすう、と消えていきました。


私は薄暗くなった空を見上げたまま


背の高い建物に囲まれ、


幾本もの電線に囲われ、


ただ途方に暮れるしかありませんでした。