1年前の今日

私が30年師事し続けた声の師匠、ボイストレーナーの田中晴子氏との最後のレッスンの日でした。
全身がんのお身体であるにも関わらず、生徒さんには一切を伝えず、全てのレッスンを休講する中、7月にワンマンライブツアーを控える私に
「美保子ちゃんだけはレッスンをしておきたいから、家に来てもらえませんか?」
ご連絡下さいました。
晴子さんのお身体の具合が悪いことは分かっていても内情を知らず、そして絶対に復活されるものと信じ、私はレッスンをしていただけることが有難くて、嬉しくて、喜び勇んで向かいました。
到着して直ぐに全身がんとは仰らぬも、お身体のことをお話して下さいました。
ですが、少し痩せられていてもそのお肌の艶々具合、変わらぬ美しさに、療養されたらまた元気流々の晴子さんに戻ると信じて疑いませんでした。
そしてレッスンが始まるやいなや
この時間に枯渇していた私の容赦なく溢れてしまうエネルギーに晴子さんのエネルギーが覚醒しまくり、その背中からは命の炎が見えた程。
晴子さんの少し枯れていらした声がみるみる大きく艶やかに。
この30年、史上最高のおそろしいくらい濃密で濃厚なご指導、まるでセッションのような時間を2人で共有することとなりました。
そしてこれはまだまだ続く、もっと教えていただきたいと、大バカ者の私は思ってしまうくらい、しあわせすぎる時間でした。
そしてレッスン後、下まで送って下さった晴子さんの旦那様の一言で私は気付きます。
私は今、命をいただいた、と。
結果、この直後に晴子さんのお身体は悪化、即入院され、7月18日に天国へと旅立たれました。
人生で一番泣きました。
悔いました。
責めました。
「晴子さんはしあわせだったと思うよ。」
「晴子さんは全て自分で決めて、美保子を呼んだんだよ。」
周りはそう言って下さる方ばかりで、私を責める人は一人もおりませんでした。
晴子さんの覚悟に、私も覚悟を持って向かい、これ以上無く応えて、これ以上無く応え返していただけたんだと。
また泣きました。
晴子さんにとって最期のレッスンの生徒として、一番弟子の私を選んで下さったことを心から光栄に思っています。
そしてどんなに深い愛情と繋がりを持って、ここまで育てていただいたのか、やっと知ることも出来ました。
そしてこの1年、晴子さんを常に感じることで、こうならなくては成長することが出来なかったことを体現してきました。
そして遂に、先ずは配信先行にてリリースしました、モモナシ6年振りのオリジナル最新アルバム『最高の続き』
この曲、実は1年前の今日。
晴子さんにその歌唱を聴いていただいた曲です。
歌詞を見せると
「最高の続き?!ほぉー。」
と、何かを思われたような晴子さんのリアクション、ハッキリ覚えています。
最高に続きがあったなら。。。
奇しくもこの最後の晴子さんとの最高の時間ともリンクすることになりました。
私がアルバムタイトルを「最高の続き」にしたいと提案したことは言うまでもありません。
このアルバムを晴子さんに直接お渡しして聴かせたかった!
とは思っていなくて。。。
師匠を失うことで、歌うことが出来た11曲。
既に晴子さんと一緒にレコーディングをしたと思っています。
晴子さんとの最高の続きは、1年前の今日から、そして1年経っても、更に、これからも続いていきます。
こう思わせてもらえること、今尚、力をいただけること、本当に偉大な師匠です。