~第二十三話からのつづき~

お父さんはわるみぽを車庫へ連れて行きました。

「本当に足が速くなりたいか?」

「はっ、はい!…。」


「だったらエレクトーンをやるんだ。」

「えれくとーん??」

「そうだ、エレクトーンだ。」

「なあに、それ??」

「ピアノでもなくてオルガンでもない。
 エレクトーンは両足を使うぞ。
 これをやれば絶対に足が速くなる!!
 やるか??」

お父さんはずっと怖い顔のままです。
わるみぽはもう耐えられません。

「やります!!ぜったい、足はやくなります!!」

「よし!乗れ!!」

お父さんはそう言うとわるみぽを車に乗せて走り出しました。
「どこへいくの??」

お父さんは無言のまま、景色はどんどん暗くなっていきます。

「着いたぞ~。」
ちょっとやさしいお父さんに戻った気がしました。

暗い、森の入り口みたいなところで車は止まりました。
大きな木に囲まれた坂道を二人で歩いて行きます。

「………………。」
わるみぽはもう質問も出来なくなっていました。


すると綺麗なお家が一件、見えてきました。

玄関の前でお父さんが
「ごめんくださいー。わるみぽの父です。」

「はーい。お待ちしてました~。」

中から声がして、扉を開けてくれました。
「どうぞお入り下さい~。」

目の前に現れるは…変に着飾った上品なお婆さんでした。

「!?!?!?」
お婆さんのお家の中は更にキラキラしていて
見た事の無いじゅうたんや時計、絵や食器に猫
まるで宝石箱のようです。

「うっ、わぁ、、、すごい。」

招かれたお部屋のソファーに座ると
目の前には真っ黒なピアノと
茶色の、オルガンみたいでそうでないものが置いてありました。

「わるみぽちゃん、お待ちしてましたよ。
 これからお稽古がんばりましょうね。」

「!?!?!?」
「じゃ先生、ワタシは終わる頃に~また迎えにきますので。
 どうか宜しくお願い致します。」

お父さんはそう言うとさっさと出て行ってしまいました。

「えっ!?おとうさん!!」


「さて!わるみぽちゃん、これがエレクトーンですよ~♪」
茶色いほうのふたをガラガラ~とお婆さん先生は開けました。

「あ、おぉ~。」
鍵盤が二段になっています。

「さあ、座って~。椅子を調節しましょう。」
すると足もとにも鍵盤のような棒が長いの短いの何本もあります。

「ああぁっ!これが……。」

「左足でここを踏んで、右足でボリュームを踏みます。」
「ほんとだ、りょうあしだ!」

「さあ、一緒に座って、ドレミファ~からやってみましょう。」
「はい……………うっ!!!」
桃梨 上村美保子オフィシャルブログ-P1001623.jpg
その瞬間、大きく広がるしわくちゃのお婆さん先生の手に
わるみぽは釘付けとなり、言葉を失いました。


(うっ、あっあぁぁぁぁ、、、、、
 えがおがやさしくてきれいなおばあさん
 にんげん、はてはこうなっていくんだ……。
 こんなにもいきていかなくちゃなんだ……。
 わたしはここまでたどりつけるのかな……。)


わるみぽはお婆さん先生の手から、瞬時に、
壮大な人生をかいま見てしまい、さらに自分に置き換え
驚きとおののきを隠くす事が出来ませんでした。

「ド~レ~ミ~ファ~、、ソ、ソ、、、
 わっ、わるみぽちゃん!わるみぽちゃん!!」


もう、わるみぽには、何も聞こえませんでした。

~いづこへつづく~