「どんなことをして過ごしていたんだ?」
「彼女とか?」
「そう」
「僕たち2人は、当たり前のことを知らなすぎたんだ。だから、それを一つづつ埋めていった」
「例えば?」
「カラオケだって、当時はブームだったが、お互い初めてだったんだ」
「ブームなのに?」
「世の中はブームかも知れないが、僕らの周りは無気力な人間しかいなかったんだ」
「だから、初めて、と」
「そう。二人で6時間歌いっぱなしだったりとか。」
「彼女は?」
「喜んでいた。負けずに唄いあって、二人ともフラフラだった」
「良い想い出だな」
「だから、彼女が好きだった唄を聞くと、ハッとする時がある」
「忘れられない日々」
「ああ。他にもたくさんある。旅行にも行った。いろんな所に」
「旅行なんか好きだったのか?」
「ああ。ただ、一緒に行く奴がいなかっただけだ。何をするにもめんどくさい、しか言わない奴らばかり」
「彼女となら、行けた」
「そう。大阪も、東北も、とにかくいろんな所に行った。日本海も見たっけ」
「日本海?」
「冬の、な。寒くて仕方がなかったけど、彼女は喜んでいた」
「凍えるほどの寒さに?」
「寒ければ寒いほど、春の暖かさやありがたさ、喜びが分かるって」
「苦労性だな」
「僕は同じことを彼女に言った。彼女は恥ずかしそうに笑っていたよ」
「そうか」
「スポーツにも挑戦した」
「溢れる想い、全てはき出して良いんだぞ」
「迷惑か?」
「まさか」
「すまんな。今はなぜか楽しい。彼女と一緒にいるようだ」
「そうか。良かったな」
「・・・ああ」