最終日は2つの山を攻めた。


朝起きたら、寝坊してしまい親分に電話を入れる。

あと30分早く起きるはずだった。


「今、起きちゃったショック


「来るならおいで」


「わかった!」と車を急がせる。


遅刻したくせに、化粧はする。


逆に言うと、化粧をする時間がないから、寝坊した!と思うんだと思う。


スッピンで飛んでいくには間に合う時間だ。


小綺麗な身支度はマナーなのか、プライドなのか。


猟では「女」を全面に出すと、引かれるし、自分も面白くない。

性別、年齢、社会的地位など何も必要なく、同じ時間を同じ目的で達することで仲間意識が高まるだけだ。


「女扱いしないでください!」みたいな高いプライドも扱いにくいと思う。


だが、私は必ず化粧をする。


匂いで獲物が来ないという古臭い言い伝えは、なーにも根拠がないし、眉毛をきちんと書かないと、強気にもなれないからだ。



はて、強気は必要あるのか?(笑)


多分、ない。


化粧してないと「やべぇ、ねーさん、寝起きで機嫌が悪いだろう」と触らぬ神に祟りなしで人が近寄らないだけだろう。




山に着いたら仲間達は、すでに移動を開始していた。

私は息子にタツマを教えて、自分のタツマに走る。


朝のタツマは日陰   


タツマにいる間中、長靴は雪の中。


昨年までカイロなどが必須アイテムだったのに、猟期最初の身体が慣れていない時以外は使用せずに終わった。


猟装も厳冬期のものは使用せず、比較的軽装だった。

暖冬なのかな。


寝坊して、テキトーに、そこら辺の物を着てきたのに寒くない。


化粧はするくせに服はどうでもええのか…。



昨日、囲炉裏で炙られた猟装は着たくなかった。



1回目は空振りに終わり、2回目を始める。



やはりどこも積雪で走るのが困難だ。


幅の無いカーブは、なぜか谷側に車が吸い込まれるように曲がっていく。


カーブでハンドルを切るとタイヤが横倒しになるから、走行がスムーズにいかない。


圧雪、ブラック、ミラーバーンは慣れているけど、山道は高さでビビる。


今回は、みんながビビっていたから私だけじゃなくてホっとする。


息子が運転する?とか言うこともあるけど、雪道を知らない若者の山道、雪道運転ほど恐ろしいものは無し。


下道で積雪運転してから言って欲しい。




なんやかんや←便利だなぁ

で今日の猟は終わり、3頭の獲物を手にした。


みんなで肉を分け合って、帰路につく。


「お世話になりました!」

「ありがとうございました!」

「来期もお願いします!」

「しばらく会えないけど元気でな」


みんな、口々に感謝を言い、お互いを思いやり、来期も山で会おう!と言葉が飛び交う。


そんな初めての光景を見て、初心者1年目の息子は、ちょっぴり寂しさを感じたようだ。


「また、みんなで来期出来るんだよね?」

「俺たちも参加するんだよね?」と。


卒業式みたいな雰囲気だったから、別れを感じたのかもしれない。



ただ、一猟期が過ぎるだけなのに、確かに寂しさも覚える。

これから何年も繰り返される事だけど、年齢差もあり、またお互い元気で一緒に遊ぼう!と願いもある。


特殊な趣味だから、山での仲間は、山に入ると「助けてくれる」「助けないといけない」が強い。


なので、初心者のお客さんにも、自分を出せる猟隊を見つけてねと言う。


本音を言えて、冗談を言い合い、様々な共有ができる場所が、その人の心地いい場所だからだ。



我が家はオンオフがハッキリしている。


夫婦であっても同じ感覚で無ければ、他所で遊んでいただろう。


夫婦だから一緒に遊ぶのではない。

ハンター同士、独立していて息が合うから一緒に遊んでいるだけなんだろう。


旦那がいなくても平気で山に入るしね。

みんなに、嫁さんって扱いもされていない。



私達のオフは商売が絡まない場所で遊びたいので、お客さまの同行は申し訳ないけど、断っている。


気を使ってやる猟は多分、楽しくなくなる。


営業と割り切れば良いのだろうけど、猟の楽しさなど語れなくなるだろう。



なので、ブログを書いている。

言葉でしか伝えられないからこそ、読み取って欲しい情報はドンドン発信していく。


もちろん仲間作りのお手伝いはします。

(また、北海道猟は別です。そこは、長野県ハンター同士、一緒に遊ぼ!という趣向なので)



ですが、末永く私達が猟を楽しみ、お客さまにも楽しくご来店してもらう為には、自分達のスタイルを維持したい意向をご理解ください。



1年生、どこから獲物が来るかなど楽しみと共にビビリも入り、毎日がおつかれの様子。


でも、すぐに獲物の気配、来るであろう場所、銃操作の自信、全てを手にした時には山の景色が今よりも綺麗に見えてくるよ。


山を楽しむ。


ハンターは登山とは違う。

自然を求めて山に入るのでは無い。


野生と自然。

野生動物を求めて山に入る。


自分と獲物の命の重さを知り、山を歩く。


奪う命、得る喜び、

そこに折り合いをつけながら猟をする。


銃猟は15日の日没まで。

日没過ぎれば、山は静けさを取り戻す。


その瞬間、獲物から、尊い野生動物となり、

銃を持たない私達には勝つことの出来ない野生の強さを取り戻す。


今年は大きな事故など聞こえて来ていないのですが、ラストまで、みなさん御安全に。





自宅で肉をトリミングしている間、ずっとチビ達は離れない。どんだけ鹿肉が好きなの?(笑)と言いながら、切り分ける。



鹿肉はヘルシーというけど、ヘルシーって言葉だけでは実感湧かないよね。

お料理中、鹿肉を触っても、水で洗い流すだけで手はサラサラだ。


豚肉を触った手のようにギトギトしていない。

鶏肉より、サラサラと水に流れる。


私達の身体の中でも、同じだろう。


この表現が、わかりやすいかな?と思い書いてみました。