山の犬達のお世話は翌日から始まりました。
2日目からは、いきなりのボッチです。
性格も名前もわからない犬達の群れに、飛び込んでお世話です。
まー、いろいろありました。
いろいろありすぎて、端折ります
のびのびとした山の中。
一番記憶に鮮明に残る思い出を書きます。
お世話開始 5日目ぐらいでしょうか。
山に1人で向かいました。
犬達のいる場所のゲート前にジムニーを止めた途端、異様な雰囲気を感じました。
犬達の吠え声も、いつもと何か違う
山だから野生動物もいます。
でも、犬舎のゲートを開けて入れば、野生動物から守ってくれる心強い猟犬達がワラワラいます。
ん〜。なんだろ!?
5日目なので一連のお世話にも慣れ、犬達もフレンドリーだとわかってきていたので(ハチ以外は)不審には思いましたが、「お待たせ〜」とゲートを開けようとしました。
係留されてるハチが私に異様に吠えまくります。
いつもと同じ威嚇の声ではありません。
ん??なんか私に言ってる??
私の動きも止まります。
来るな!!!と吠えてるように感じます。
えーと…来るなと言われても…世話はしなきゃいけないしなーと、ゲートを開けました。
動くな!と言う吠え声で私の動きは制されました。
え?なに?
なに?この切迫した空気…。
ハチは私が動きを止めたのを確認して、私が動かないか確認しながら、山側を見て、また私を見て…を繰り返してます。
シーン…とした長い時間に感じましたが、実際には他の犬達もけたたましく吠えていたでしょう。
2、3歩、ハチに近づいたでしょうか。
動くな!と、また止められました。
なに…?とハチを見ると、獲物がいる時の目をしています。
でも犬舎の中に危険な動物は思い当たりません。
ハチの目線をたぐると、何かはわかりませんが、警戒すべき動物がどこにいるか、すぐにわかりました。
ハチが、今、来い!と私を呼びました。
ハチに急いで近づきます。
ハチが、私の顔を見て、自分の後ろを見ました。
後ろに来い!ということです。
急いでハチの後ろに行きました。
警戒しています。
私にしたら一番怖いのがハチです。
ハチは、そこから動くな!と右に左に顔を振ります。
右、左…ということは真後ろにいろ!ということね!何が起きているのかわからない私は言う通り、動かないようにしました。
ハチは落ち着きを取り戻し、吠えるのをやめました。ですが、視線は目の前の山の中。しかも近い。
怖い…。
この子、私を守ろうとしてる…。
だから、後ろに来い!と誘導したんだ。
けど…なにから?
ハチの後ろに回った時に、何が起きてるのか把握しようと犬舎のチェックを目だけでしました。
ノーーーー!
声にならない声が出ました。
花子の扉が壊れてるー
花子とはドラム缶よりデカーイ猪。
しかもキバは、めっさ長ーい!
ぎゃー!ハチ!ハチ!!
わかったら黙ってろ!動くなよ!!
ぎゃー!
みたいなテレパシーの会話が成立しました。
ガッテン!承知!なんて言える空気じゃありません。
のんびり稲刈り←(まぁ生死はかかってないからね。超忙しいだろーけど私よりはマシ)をしているだろう飼い主に電話します。
「なに?」
「い…イノシシが逃げてるっ!怖い!怖い!×100!!!」
「早くそこから出て!」
「無理無理無理!出口まで距離ありすぎてムリ〜😱😱😱」
「安全な場所にいて」
「いま、ハチの後ろ〜!」
「待ってろ!」
飼い主を待つ間、さっきまで大人しかった猪が犬舎の中を走り回ります。
ひー
ハチは猪を睨みつけていますが、草や起伏で私からは猪は全く見えません。
私は金網によじ登り、ひー
猪は、めちゃくちゃ走り回ってるようです。
犬舎に入っている犬達の興奮している吠え声、ハチの目の動き、警戒している動きで近寄ったり離れたりがわかります。
ハチは私に近づけないようにガードします。
近くに来た猪に、牙を剥いて立ち向かいます。
ハチだって繋がれているからヤられちゃうのに…。
ハチの懸命なガードで私には猪は近づきません。
でも、猛獣と同じ小屋の中にいる丸腰の私。
ひーひーぎゃー
やっと、助けが来ました。
手にはベニア板とスコップを持って。
ん?猪ってそんな感じでOK?
銃は無理だし、うん。仕方ない…。のか??
つい数日前まで猪を見たことなかった私でも、ヤバイのはわかりますが、私は怖くてハチの後ろの金網に登ってるだけです。
とりあえず動画を撮りました←え?(笑)
でも、あとから動画を見たら手がブルブル震えているのがわかりました。
2人の助けがあり、猪は、10分ほどで無事、自分の小屋に入りました。
小さい頃から飼っているペット化した猪で良かった〜。飼い主がオラオラ怒っているから、ヤベー!みたいに小屋に逃げ込んだ感じです。
助けてくれた親方に感謝しま…
え?いま、「扉を直さなきゃとは思っていたんだよね」と、言った??
スコップ持った正義の味方!さすが親方カッコイイと、思ったけど、違うじゃん。
そもそも、みんなの危機を作ったのは、悪のスコップ稲刈り腰痛男だったのか
うん。腰痛だから直せなかったのね。
うん。一生、怨んじゃうからね
それからというもの、ハチと私は親友になりました。
ハチは私が大好き。私もハチといる時間は安心する時間になりました。
おーまーえー、最初、私を噛もうとしたよなー噛むなら噛め〜!と口に手を突っ込んでるお写真です。
初めて会った時は、ハチはリーダーだから私を試したんでしょうね。
そんなハチが猟犬の精悍さ、賢さ、優しさを私に教えてくれました。
猪が如何に危険なのかを知っていてガードしてくれたのも猟犬だからでしょうね。
つづく
※ 狩猟期間に狩猟を許可された登録者によって適法に捕獲された「狩猟鳥獣」であれば飼育や販売、譲渡しが可能です。
※猪は特定危険動物では無いので檻に規制はありませんが、二重檻での飼育、飼育所内の話なので問題はありません。
※ハチは縄張りではリーダーなので私を試して威嚇してますが、縄張り以外では他人に威嚇しない犬です。ご安心を。