猟犬ってどんな犬?と聞かれることも多いので、少々、説明しますね。


大物猟犬(熊、猪、鹿)のお話です。


猟犬という「犬種」は、いません。


純血種の「性能」を選りすぐり作っていくので、自分のスタイルに合う猟犬を作るには長い年月が必要となります。


例えば、足が速い犬が欲しいとなればウォーカーハウンドなどの足の長い早い犬、吠え声の大きさ、追跡が欲しいと思えばビーグル、勘の良い勇敢な犬が欲しいとなれば紀州などの日本犬…と、既にここまでで3種類の犬種がミックスされてます。



性格としては、洋犬は一般的に比較的穏やかで、山中で他の人に出会った場合も威嚇はしないでしょう


日本犬は飼い主には従順ですが、獲物を追って興奮しているお仕事中に、知らない人と出会うとトラブルも出てくる心配もあります。


通常、ペットとして飼育されている日本犬も性格にはよりますが、性格をよく知る飼い主に聞いてからで無いと触るのには危険が伴います。


純血の日本犬を猟犬として使用する場合が少ないのも、この気性にも寄ります。


洋犬はシツコイ追跡で長走りもします。

犬達の回収にも手間取り、未回収となれば、ずっと探し続けなければなりません。


遭難や事故(私達の知らない場所での獲物との接触事故、罠にかかっている、交通事故…)などなど、回収出来ない時間の不安は尽きません。



猟の終わりは猟隊全員で犬探しをします。


山道を走り次々と確保していきます。

飼い主以外に捕まらない犬だと暗くなってしまうので人馴れも大事です。


この子は仲間の犬です。

コワモテだけど←よけいなお世話(笑)

働いてくれる大事な仲間なのです。


この日は回収した私と一緒に山を降りました。


大人しくしてたので疲れてるな〜。ありがとうねーと感謝していたら、静かに私の昼食のパン🍞を食べてくれてました。


お腹も空くよね〜(笑)


私のパン〜えーん


後日、飼い主から2倍のパンを貰ったので

また食べてくれないかなーと思いました(笑)←現金なやっちゃ




こちらは、うちから出た子犬。デビュー間もないけど、頑張ってくれました。良い笑顔で回収です!


車に載せると、どの子も安心&満足気で可愛いもんです。




捜索範囲が広く、シツコイ追跡をしつつ、勢子(犬を操り、山から獲物をタツマに届け、犬達のリーダー役)に報告しに来るような犬が、お仕事が出来る猟犬です。



なので猟犬は猟のスタイル、地形、どの獲物に特化させるかなどを考慮し、代々作られていくのです。


もちろん、純血でも出来る子もいます。

生き物なので、性格が多大に影響します。


せっかく良い性能を持っていても、勢子から離れられない犬は、追跡能力や自主性が備わっていないので獲物の捜索範囲が狭く、タツマにモノを届ける率がガクっと下がります。


これは「呼び戻し」の訓練の失敗です。


「呼び戻し」を訓練しようと山の中で、呼びすぎるのも、常に離れないように訓練してしまうことになるので注意が必要です。


一度覚えたことを変えるのは困難なので、如何に訓練するかも非常に大切なことです。


犬の性格、飼育環境、飼い主の訓練の勉強、性能、信頼関係…と猟犬を育てるには様々な知識が必要になります。


他所様のペットに危害を加えさせないよう、小さな頃から交流させるのも必要となってきます。



純血の話に戻しますと、飼い主のボディガードをしつつ獲物に対峙するクマ猟の北海道犬など、純血であるが故に、持っている血がある日本犬もいるので、何に特化させて訓練していくかでも変わります。


例えに出した北海道犬でも実猟犬、ペットタイプと血が分かれていきますので血筋が変わると性質も変わるので、簡単に言うには難しいです。


私は北海道ではヒグマ猟をしていたので、代々の実猟犬としての血統を持ち、冬の寒さや雪の中でも元気で強い北海道犬は山のパートナーでした。


勘も鋭くアイコンタクトで通じ合う賢い子です。





走って豪快に転ぶ(笑)




おおっ!復活しただけなのにカッコイイ(笑)

と、どの子にも親ばかな普通の飼い主です。



ですが、険しい長野県の山で、今のスタイルの巻狩りだとボディガードの役割よりも捜索範囲を広くしなきゃいけないので今は山には猟犬としては行っていません。


大事なパートナーに変わりはないのですが照れ



長野県で北海道犬は使えないのか?と言うとこれも違う話で、そこの猟隊によるスタイルと訓練によります。


うちの子はヒグマ猟に特化して育てたので今更、変わることが出来ないだけです。

北海道でこそ本領発揮出来る子です。


動物を飼っている方は、わかるでしょうが

性格は、その子、それぞれです。


訓練しなくても使える子、訓練しなければいけない子、訓練をすれば、訓練しなくても使える子より上をいく子…それぞれです。


また熊猟、猪猟の場合、訓練だけでなく先輩犬からの指導がないと熊や猪の顔方向に向かっていく子もいるので、牙で傷つけられたり、叩かれたりと致命的な怪我をします。


そのような子は危険な猟には適さないです。


勇敢だから顔に行くと言う人もいますが

短命で終わってしまいます。


常に後ろ、後ろに回り込んで、足止めさせる子に育てるのが良いでしょう。


顔に行く子は若くて俊敏なうちは良いかもしれません。ですが、引退を早くしてあげないと大怪我をしてしまう可能性があります。



優しい先輩(指導役)がいるとチビッコを預けられので安心です。


うちは意外にも小さい頃からヤンチャで手がかかり、喧嘩っ早いアカがチビッコを育ててくれてます。


デビューしたばかりの仕事中に遅れた子には寄り添い、仕事をしながらも無我夢中にならず、大丈夫?来れる?と若い犬を導いてくれます。


リーダーの器だったようです。



ご褒美を貰うアカです。


普段、私には必ずドガーン!とボディアタックして来て、私がいつも負けます。


好きなのはわかるけど…

痛いっっ!ちょっとー!と毎回、小競り合いです


親方にはしないので、私はアカに育てて貰ってるんだと思います(笑)


アカとの関係は、このままが良いので、そこを矯正しようとも思いません。




アカの母、ホシ。女の子なのにリーダーでした。


女帝に相応しい態度、気性を持った優秀な猟犬でした。私が出会った時は既にリーダーだったので、群れの仲間に必要な人間か、仲間に近づけて良い人間かどうか、強烈な審査をされたものです。


彼女の一声で、私と一緒に楽しく遊んでいた犬達が一瞬で敵に回りました。


リーダーとは怖いものです。


我が家は頭数がいるので猪猟には、この子達、鹿猟には、この子達、この山は、あの子…と、その日の気候、山の地形、体調を考慮して数頭、連れて歩きます


早朝、犬達は、山に行きたくて自分が行く!とアピールしてきます。


犬達にとって猟は「楽しい」ものなんです。


私達もパワーが許されるならみんなを毎回、連れて行ってあげたいものです…が、たくさんだと収拾がつかなくなるので無理〜ガーン


群として犬達を扱うには、リーダー犬の存在が不可欠で、その子に任せておけば次世代の子は、ある程度、猟犬として育ち、統制の取れた犬社会が生まれます


リーダーとなる犬に必要なのは、仕事力、統率力、慎重さ、冷静さ、勢子との信頼性、そして犬達からの尊敬となります。


なので、猟犬を繁殖する人はリーダーの血を大事に残していきたいものなのです。


リーダーの血から産まれる子は全てが受け継がれるか?というのも、まず有り得ません。


そんな賢いリーダー同士を掛け合わせたらどうなの?というと、これまた気性だけが激しい犬が出てしまう可能性もあるので難しいのです。




シャンプーも好きな普通の子なんですよニコニコ




爪切りもするし好奇心旺盛で優しい子達です照れ




時にはドライブも楽しみます。

猟犬と言ってもそれは「お仕事中」だけ。

皆さんの子と同じく大事な家族の一員です爆笑



実際、生まれ出る子にはペットタイプ、なんとなく出来る子、ズバ抜けて出来る子…途中から素晴らしく化ける子…と分かれます。 


なので性能を引き出してあげて育て上げてからではないと見極めは困難です。


リーダーは力で他を押さえつける必要もあるので喧嘩も強くなければいけないし、頭も良くなくてはいけない。持って生まれた性格と血と性能です。





我が家の愛犬マルとマルコペアです。


誤射を防ぐための装備と防牙ベストを着せてます。


防牙ベストは出来るだけ着せてあげてください。

お値段は安くは無いですが大事な仲間に怪我をさせない為には必要だと思います。


特に黒っぽい子、茶色の子には誤射も防ぐ目的があるので、そこはぜひ用意をしてあげてください


ハンター仲間としても、わかりやすくしてくれると、いらぬ緊張をせずに済むので、ありがたく思います。


いきなり服を着て自由に動ける子も少ないので、たまに着せるなりして慣れさせてあげてくださいね。


お持ちでない方は様々なタイプがありますので、ご相談ください。痛い思いをさせて悲しむより、病院代をお支払いするより、ずっと安価ですから


また、痛い思いをした子が復帰できるかも難しいところです。トラウマになってしまい、車から離れなくなってしまいます。


猟犬は獲物を捜索し、噛み止め、吠え止め、追いながら吠える犬等々、様々なタイプがいます。


※猟犬を山中で放すのは法律で認められていますが、噛殺は禁止されてます。


我が家は噛み止めは、まずさせていません。

獲物は敵ではありません。猟はゲームでもありません…と話が逸れていきそうなので。


大雑把に書きましたが、猟犬を貰ったから猟犬として使える、猟犬だから凶暴…などなど、実際は当てはまらないので、愛情かけて訓練をして一緒に山に行きパートナーとして時間を共有してください。


猟犬として飼ったけど、使えない…その場合は機械じゃないので育ててください。


地形、猟場、スタイルにより違いますので、良いところを伸ばしてあげてくださいね。


と、いうことで、ところどころ脱線しましたが「猟犬」とは何か?のご質問には答えられたのかな。


我が家の血は40年弱、主人が育ててきた犬達です。何代も何種類もの血が混ざり合って今の子達がいます。


猟犬は危ないの?と聞かれますが、このマルやマルコも普段は甘えっ子です。



普段は笑顔の可愛いマルコ照れ


うちの子達は親方(主人)の命令は絶対です。ママは愛情係&オモチャ&看護師さんです。具合が悪いとママに言い、非常に具合が悪いと親方に訴える。



あ…、あと「使える猟犬」と書きましたが、「自分のスタイルに合う猟犬」って意味なので不快になったら、ごめんなさい。


猟犬が居ないと巻狩りの伝統は守られず、

猟の成果も全く違うので、猟犬に感謝して毎回、猟を終わりにします。


良い猟犬を持っていると捕獲率の高いハンターになると言われてます。


犬達に愛情を注ぎ信頼関係を作るのが基礎になり、よく見ていることで隠れた資質を伸ばしてあげられるのです。


最後に


一部の猟犬を大事にしない方がクローズアップされていますが皆さん、大事に育ててます。


我が家も置き去りにすることなど考えたこともなく、必ず探し出します。

その為に信頼関係は大事なのです。


猟犬は獲物が先々にいると、次々と目標を変えて走り回り、県を跨ぎ行動をすることもあります。


なので、探し出しきれなく届け出た場所から遥か遠くで保護されることもあるかもしれません。


会いたくても会えないこともあるかもしれません


獲物を追ってる猟犬は出来る猟犬と判断出来るので盗難の場合もあります。


一般の飼育者でも、放棄する人がいるように残念ながら、一部では、そのような人もいるとは思います


ハンター全体に向けられる、猟犬を捨てる人達という認識は違いますので、心を痛めている方々に、そのことはお伝えしておきますね。


猟犬は可哀想というのも該当しません。

彼らは、自然のドッグランで遊んでいる感覚です


私達は精一杯育てています。

猟犬の育て方や相談も銃砲店では受けてますので、なんなりとお聞きくださいね。




簡単ではありますが、ザっと猟犬の説明をしました


奥が深い猟犬、様々な知識と経験で皆さん産出しているでしょう


各地で人知れず有害駆除、野生動物の個体数調整の為に働いてくれている皆さまの愛犬が無事に猟期を終えることを祈っております。


日本中の猟犬達に良い年の暮れとなりますように。