79年の4月に買った講談社文庫です。訳者は駒田信二さんでした。この先生にもずいぶんお世話になりました。

 

 魯迅さんといえば、つい竹内好さんだ! なんて思ってしまうけれど、たぶん、いろんな方が翻訳されているんでしょう。長い間放置していたから、本の表紙に魯迅さんがいたなんて、全く知りませんでした。そして、どこかで水にぬらして本が少しだけブヨブヨになっている。それでも、大事な本だから、ずっとこの40何年一緒に暮らしてきました。

 

 魯迅さんとの出会いはいつだったのか? 「故郷」が中学の教科書に載ってたんだろうか、高校か? 三省堂の教科書にあったんだろうな。中学の時の教科書は捨ててしまったんだった。今あれば、どれだけ嬉しいだろう。でも、なくてもいいやと思う。読んだということは変わらないのだから。

 

 そう、本の体裁とかコンディションはどうでもいい。大切なのは読んであれこれ考えられたかなんだ。

 

 「故郷」は何か考えたのか? 考えたというより、大きな事実をつきつけられ、大きな事実を前に小細工するよりそれに立ち向かうしかないのだ、と学んだ気がする。

 

 わたしは思う。希望というものは、もともとあるともいえないし、ないともいえないものである。それはちょうど地上の道のようなものだ。実際地上にはもともと道はないのだ。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。……『故郷』のラスト