北原白秋の作品で「砂山」というものがあります。
1 海は荒海、向こうは佐渡よ。
すずめ啼け啼け、もう日は暮れた。
みんな呼べ呼べ、お星さま出たぞ。
2 暮れりゃ、砂山、汐鳴りばかり。
すずめちりぢり、また風荒れる。
みんなちりぢり、もう誰も見えぬ。
3 かえろかえろよ、ぐみわらわけて。
すずめさよなら、さよなら、あした。
海よさよなら、さよなら、あした。[1922・T11 小学女生]
今回の能登地震で液状化が激しかった新潟の海の風景でしょうか。
何だか人恋しい、スズメがとてもかわいらしい雰囲気を出している歌です。こんなに人とスズメが仲良しになれたなんて、それは素晴らしい。でも、これも白秋さんだからできることであって、凡人の私たちにはなかなかできないことです。
今から50年以上前、この「砂山」を借りてきた歌が作られました。『帰って来たウルトラマン』のエピソードの中で、夫婦怪獣のシーモンス・シーゴラスという怪獣が日本で暴れます。それも、自然に生きていた怪獣を日本に連れてきたバチが当たって、二匹はやむを得ず暴れただけであって、日本破壊が目的ではありませんでした。すべては、人間どもが自分の利益のために動き、自然からのとばっちり(はねかえり)を受けるという古典的な話でした。
ネットでは現地の人が二匹の怪獣の歌の歌詞が書いてありましたので、それをコピーさせてもらいました。
♫ ヌレクハーヒーウーモー、 ケナケナ、シーモンス
ヨドサーハーオーコーム、 メウラア、シーモンス
シーモンスは島の守り神。シーモンスは気立ての優しい怪獣。
だが、シーモンスが海を渡る時は気をつけろ。恐ろしい事が起こる。
そういう意味だったそうです。これを考えた人がいて、北原白秋の「砂山」をそのまま逆にしたということでした。「すずめ、なけなけ、もうひーはくれた」「うみは、あらうみ、むこうはさどよ」になっていますね。
たしか、二番に「シーゴラス」も出てきたから、夫婦の神獣を歌ったことになるのでしょう。そうだったのか、あの歌には白秋さんがベースになっていたのか。本当にいいところに目をつけたというのか、アイデアがありましたね。文学的でもあるな。