小生の田舎、一戸町の本家には旧麹蔵があります。
40年ほど前までは、ここで地酒を造っていました。
「奥の峰」という銘柄の酒で、お年寄りには覚えておられる方も居られます。
隣の「南部美人」はシラス地層からくみ上げた井水ですが、本家の水は馬淵川水系の水、奥中山あたりの伏流水でそれよりもさらに良い水だと、従兄弟が言っておりました。
朧気ながら酒造タンクが並んだ薄暗い醸造倉のイメージが残っていて、嘘か誠かその昔はそれに「うさぎ」が飛び込んだ!?、とかいう話も聞いた記憶があります。
もう何年にもなりますが盛岡の「桜顔」醸造元が破綻したときに、連帯保証人となっていたせいで本家も破綻してしまい、それ以来醸造はやめてしまいました。
敷地も半分は借地でしたから、醸造蔵は取り壊され、由緒ある「麹倉」も寸でのところで屋根だけ壊されましたが、寸でのところで本体は破壊を免れました。
2018/06/03撮影 岩手一戸町 本家旧麹倉
御覧の通り、この麹蔵は当時最先端のレンガ積です。
1880年代の造築です。なぜそれがわかるかと言うと、この建材のレンガは日本鉄道※現東北本線、の青森開通時に彫られた二戸トンネルのトンネルポータルに使用されたレンガの端材を再利用して造られた、と伝わっているからです。
端材とはいえ140年経った今でもしっかりとしておりまして、件のユンボによる一撃にも壁面はビクともしませんでした。
イギリス積のレンガは堅固ですね~。
今は草生した敷地に寂し気にポツンと建っていますが、その昔は多くの蔵人が店の土間を行きかうなか、酒造りで最も大切な麹を育て守っていた当家の宝殿と言うべき重要な役割を果たしていました。
なので、壊されて雨ざらしになった屋根や壁際に、こうして野草の花が咲くようなことも無かったはずです。
小生にお金があれば、この貴重な蔵を元通りのモダンな姿に復活させてあげたいと、帰省の度に思うのですが、今のところ高額の宝くじでも当たらない限り、ちょっと夢物語です。
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