6日。今日は自然観察の会の運営委員会が夕方から開かれる。私の担当しているところの報告と検討事項があるので出席しなくてはならない。今までは終わってから皆さんで飲みに行っていたので行く価値があったが、コロナでは飲みに行きにくい。会議のみで夜に出歩くのはどうも落ち着きが悪い。と言って飲み歩いてもしもコロナを家に持って帰ったら老妻に折檻されてしまう。
出ていく勢い付けに会議まで六甲山を歩くことにした。「兵庫の自然を歩く」という、1985年発行の本に布引から鍋蓋山を通り鈴蘭台へ抜けるコースの地質案内がある。この本を片手に家を出ることにした。
まずはJR三宮に出る。ここから新神戸まで街中を歩く。午前中なので飲み屋の誘惑はないのがよろしい。新神戸駅に到着。
この駅は諏訪山断層の上に立っている。後ろの山の斜面が断層崖にあたる。断層が動いたときに駅の被害を防ぐためにホームと線路をそれぞれ別に作っているという。駅の下を抜けるのでいろいろと眺めたが、「これがその造りかな?」という部分が一か所見つかった。でも、正解かどうかは自信はない。自己満足でとどめておこう。
駅裏の川のかかる小さな橋に断層の説明版がある。こういうのはなかなか素晴らしい。
最初の滝が雌滝だ。
よくよく考えると、このコースは下山道とすることが多い。下り道では疲れと、三宮の赤ちょうちんの呼ぶ声が響いてあまり景色を見たことがない。今日は初めてゆっくりと眺められた。鼓滝はちょっと見晴らしが悪い。夫婦滝はよくわからなかった。道の横には布引花崗閃緑岩がある。これは、捕獲岩がよく入っている。
この本の説明書きでは、「マグマが冷えるときに早く固まった角閃石や黒雲母が農集してできた。」とある。でも、これはシャープな境界があるのでマグマが上昇するときにそこの岩盤を壊して取り込んだものだと思う。本よりも私の観察を正しいとする。自分一人なので言ったもの勝ちである。
雄滝。なかなか立派だ。
滝の落ちる面と平行になんか所か割れ目が入っている。この割れ目が滝を作ったのだろう。ここから上に行くと茶屋がある。昔おいしいお酒をいただいた。また飲みたいものだ。茶屋の上には障害者に配慮した立派なトイレがある。
悪いことだとは言わないが、ここまで車いすで往復するのは本人も介助者もなかなかの覚悟がいることだと思える。ベッドもある広いトイレなので子供のおむつ替えには有効かもしれない。でも、このお金を他に向けたら…と思ってしまう。町でもっと障害者のために整備するところがあるしそこのほうが利用頻度が高いと思う。一生懸命設計した人や作った人には申し訳ない。
展望台で景色を楽しんだら「猿のかずら橋」に出る。この橋もいつも素通りしている。今日はじっくりと見る。
吊り橋の横にカズラがよくよく見ると絡まっている。祖谷のかずら橋と比べたら怒られそうだ。
布引ダム。水源用のダムなので大雨になったらここを水がオーバーフローする。
オーバーフローしたら下に滝が出現する。ここからさらに進み市ケ原へ。ここで昼食。
弁当を作るのが面倒だったため、手抜きカレー。水をほんの少々入れる。レトルトカレーをつける。
これは家にあったごはん。
ふたをして火をつける。
沸騰してレトルトが温まったらお湯にご飯を入れて加熱する。ご飯が温まったらカレーをかけてお終い。
見た目はともかく、簡単でそこそこおいしいのがいい。
昼食後、大龍寺への道を歩く。案内書によると六甲花こう岩との境界が近づくのでその影響で布引花崗閃緑岩の白色の長石(カリ長石)が大きく成長しているのがみられるとのことだ。
私の感想は六甲花こう岩の影響というより、もともとこういう風に固結したのではないかという感じだ。肉眼では白色の長石がカリ長石か斜長石かはわからない。六甲花こう岩の影響ならその特徴であるカリ長石のピンク色が出ると思える。
また、この辺りは大きな捕獲岩がみられる。
これを見ても、外来の岩体という感じが強くする。大龍寺に出たら、ドライブウェイを再度公園に向かう。公園の手前で二つの花崗岩の接触がみられるという。これが今日の一番の楽しみだ。道路わきはネットがかけられていて苔むしている。ちょっと嫌な予感がしたが観られる所は覗きながら歩く。大体この辺りというところに出たがネットと植生などで境界はわからない。あきらめる。公園の入り口に出る。
公園に入るともう六甲花こう岩である。風化が進んでいるが、ピンクのカリ長石がみられ、黒色の鉱物が少ない。
池の横に出る。平日なので静かな空間を期待していたが小学生の団体がいてとても賑やかだ。子供は走り回るのがいい。でも、私としては期待外れ。早々と出発する。
鍋蓋北道を登る。広くて穏やかな登りだ。尾根に出ると神戸層群の礫層が分布している。
池でのんびりできなかったので鍋蓋山に登ることにする。広い道を南下する。最後はちょっとの登りで頂上に着く。
山頂は木が切られていて眺めが素晴らしい。ただ、昔の木に囲まれた静かな山頂と比べるとどちらがいいのか・・。まあ、これはこれでいいとしよう。もと来た道を引き返し、有馬街道へと下る。神戸層群の礫岩の露頭がみられる。亜円礫で大きさが適当にばらけている。ちょっとだけ運搬されてきた礫層であろう
少し下ると家がある。横にはブルーシートに包まれた機材が置いてある。
案内書によるとこの家を通り過ぎたところに六甲花こう岩と神戸層群が断層で接しているところがみられるという。崖を丹念に覗きながら下る。六甲花こう岩しか見えない。また空振りかとあきらめかけたところで断層らしき窪みを発見する。
ぱっと見はどちらも同じような岩石に見える。よくよく見ると左はややざらつき、右はすべすべしている。近づくと左が花こう岩、右が砂岩(小礫を含む)であった。これで満足して下に行く。高圧線の下で花崗岩が観られるのことであるが、ほぼわからなかった。有馬街道へ出て親和女子大へと登る。途中の崖では神戸層群が顔をのぞかせていた。
この後は女子大生の集団と共に鈴蘭台駅へと向かった。
会議まで時間があったので新開地をぶらぶらとする。「お兄さん、仕事を探していない?」などという勧誘を受けながら湊川神社へと向かう。会議は無事終了。いい一日であった。
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