高知市、横山隆一を機会にこの漫画家の、
漫画や随筆を読んでいる。
手塚治虫と違い長生きで交流好き道楽の親玉の如き人物なので
時代時代の歴史的な方々との横目で見た様子も興味深い。
そういうのもあり、読み返した。
出版当時は、「絶筆」で読んだが、
このバッハ平均律の建築的イメージ表現の素晴らしさに驚く。
もちろん、師事したモーツアルトとの作曲創作に託した
彼自身の作家論にも唸った。
そして 何よりも展開が面白い。
どう面白いのかは、あとがきの萩尾望都を読めば良い。
こっちも天才だけあって見事に伝えている。
手塚は「ジャングル大帝」の作曲の冨田勲の前でもピアノを弾いて
こんな音楽が欲しいと依頼する医大生出身の漫画家でもある。
ときわ荘の石森章太郎や藤子不二雄たちに漫画のみならず
クラシック音楽の影響も与えている。
手塚ももう少しあそこで、運よく寺田ヒロオの影響を受けていたら
かなり面白い野球マンガを残せたはず。
にしても、
例の、シリアスな場面で突然、公爵夫人がブタになったり、
主人公を付け狙うフランツとの対面がビデオテープの録画スタイルで描かれたりと
まったく手塚スタイルなのだ。
こういう漫画的なところが実にいい。
ベートーヴェンで思い出すのが昔々の「フィルムは生きている」だ。
宮本武蔵の型を借りたアニメーション映画を製作する漫画で、
「ハイリゲンシュタットの遺書」が重要なシーンで使われている。
ここには一足先に動画製作を手がけた横山隆一のこともあり
気が気でない負けん気の強い手塚と繋がっていく。
べートーヴェンから音楽が一部の貴族や宗教音楽から
芸術として位置付けられるが、手塚治虫にも重なるところ、
いや、重ねるところも多かったと察する。