見過ごしていたのは、己が小説は別にしても映画の推理物が苦手なことにあった。
だから「犬神家の一族」を適当に見ていた。
しかしこの監督、市川崑はリメイクまでしている。
それが遺作になってしまったが、最近の放映で見た。
しかも気になった。
去年見た初期といっていい白黒版「ビルマの竪琴」も
面白かったが、こちらもリメイクしている。
一体どこに再映画にする動機があったのか…
いや、そういうのにこだわらずに
平気で撮るのが市川崑なのだ。
自分の作品も、人が撮ったのもリメイクしている。
「八つ墓村」も。
豊川悦司の金田一でリメイクしている。
前作は、野村芳太郎監督で脚本は橋本忍。「砂の器」コンビだ。
原作が面白くないと語る橋本忍だから、
これは推理モノとも言えぬが、このコンビの
「八つ墓村」はオカルト的だった。
そんなわけで「キネ旬ムック シネアスト市川崑」、
「市川崑と「犬神家の一族」」春日太一著を読む。
![](https://pds.exblog.jp/pds/1/201509/29/35/d0341935_10550331.jpg?w=550&h=372)
最晩年の淀川長治と市川監督との「細雪」の対談がいい。
( 若い頃の「鍵」も淀川の手引きで誰にも渡したくない映画著作権料の
現金を持って家に出かけるが、
「先生あそこの蕎麦好きだ」と用心を怠らない。
汁がこぼれないようにの市川と淀川のタクシー道中が眼に浮かぶ。
こっちも映画にしていい )
確かにこの映画が名作。
大根役者なのにスターの吉永小百合が光っていた。
いい年して無邪気なのに悪意がある。
戦時中に軍部から圧力をかけられた谷崎潤一郎の船場のお嬢様姉妹の
滅びゆく様を優雅に描いてる。
それまで何度か映画化されたが市川のには関西らしさがあると語り、
和服はその下が裸なのよと、着こなしを演出し姉妹たちの日本女性の
エロティシズムを出したと神戸の淀川と語り合う。
石坂浩二に取材した「犬神家」の本にも
大いに納得したが、ミステリーはどうも難しいので
わかった気がしただけでもあろう。