《名前がくれた幸せ》 

ストーリーモデルは、

行動姓名学・ナビゲーター (楠木理恵あらため)梶原梨笑子さん

 

…名前の一字目に 『さ の文字があるあなたへ、

言霊ちょこっと豆知識(相性・すべてにものに名前があり、すべてのものに言霊があるのです。)

☆名前の一番最初が「さ」ではじまる、楽しいコトが大好きで、発想豊かな自由な心の言霊を持つあなたと相性の良い言霊は、「す」「は」「ら」。

この、「す」「は」「ら」の文字からはじまる名前を持つ(=言霊のパワーを持つ)、人であり、物であり、その場所(土地)です。☆

・・・・by 梶原梨笑子

行動姓名学・ナビゲーター…梶原梨笑子さん(楠木理恵あらため)のブログにリンクします

 

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☆序章~第一章まではこちら ⇒ 《名前がくれた幸せ》

 

第二章…(佐伯怜香)   (84-2

 

 

口元に薄らと残る自分を卑下するような笑いの余韻を残し、手は無意識に太もものあたりをポンと叩いた。

 

―さて・・と、・・ん?・・あっ!―

真生はズボンのポケットをまさぐり、四つ折りになった一枚の紙切れを取り出した。

そして大きくため息をついた。

 

 

「ねーちゃん…」

四つ折りになった一枚の紙を真生は丁寧に開いた。

それが、まるで直美であるかのように優しく扱った。

そこには、子どもの頃から知っている、小さくて几帳面な字が、嬉しそうに飛び跳ねているように思えた。

 

 

《今日、孝ちゃんが、誰にも内緒で着物用の髪飾りをくれた。

「赤くて綺麗だったから、牧原さんに似合うと思って」と、ニコニコ空豆笑顔で渡してくれた。

それは、小さな赤い珊瑚が、一〇個ビッシリと一列についているコーム型の髪飾りだ。

私は、「若旦那、ありがとうございます」といって受け取った。

絶対、孝ちゃん・・て、言っちゃいけないと自分の心に言い聞かせて受け取った。

でも、本当は、その場で飛び上がりたいくらい嬉しかった。

孝ちゃんからの初めてのプレゼントだ。絶対、絶対、大事にする。

毎日、忘れずにつける。

どんなときでもつけるんだ。

ありがとう、孝ちゃん。

一生大事にするよ・・。

言えないけどね。

でも、ここに書いておく。

私の気持ち、大好きだよ孝ちゃん。》

 

 

赤い珊瑚の髪飾りは、直美が頭に衝撃を受けたとき、弾けて飛んで歪んでパラパラになってしまっていた。

それを仲居頭の葉月が拾い集め。

「直美ちゃんが毎日していたものだから・・。よっぽど気に入っていたと思うの・・」と言いながら真生に渡してくれた。

 

遺骨と一緒に持って帰ったとき、壊れたものなど・・と、捨ててしまおうかと思ったが・・。

真生の嫁の朋子が、「そんなに毎日していたなんて・・。きっと大事なものだったのよ。もしかしたら好きな人から貰ったものかもしれないから、お骨をお寺に納めるときに一緒に入れてあげたらどうかしら?」と言った。

 

「好きな人?まさか・・」

真生は初め、朋子の話に、そんなことはないと否定していた。

あり得ないとことだとは思ったが、― 捨てるのは、いつでも捨てられるか・・―と思い直して、遺骨とともに家の仏壇に置いてきた。

 

まさか、朋子の言うとおりだったとは・・・。

この紙切れは赤い日記帳のしおり代わりに挟まれていた。多分、日記を書くたびに開いて見ていたのだろう。

 

「ねーちゃん、好きな人の代わりに守ったんだな。好きな人の子どもだから、命かけられたんだな・・。ねーちゃん、死ぬのが怖くないくらい、幸せだったんだな」

真生の目に直美の書いた小さな文字がぼやけて見える。

 

「心配するな、ねーちゃん。このことは、子どもの頃のように俺とねーちゃん二人の秘密だ。朋子にも言わない。ねーちゃんの大事な気持ちは、そっと俺が骨の中に入れてやるから、安心していいからな。・・じゃ、行くか」

 

真生はそこに、まるで直美がすぐ隣に座っているかのように声をかけると車のエンジンをかけ走り出した。

もう、この町に来ることはないだろうと思いながら。

 

 

 

つづく・・・

 

 

 

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『龍の鱗』