カメ、長い旅 | カメと猫

カメと猫

クサガメと猫の成長の記録

しばらくぶりのブログになってしまった。

それには理由があって、実は2022年の初夏、今から一年半前のこと、カメ子が突然いなくなってしまったのだ。


気付いた時、ふたの網が少しだけずれていた。

どうして網がずれていたのか分からない。それにそもそもタライは網がズレてもカメ子では超えられない。頭が真っ白になった。


野生生物に狙われたのか、とも考えた。カメ子がいなくなってすぐ、近所にアライグマが出たと聞いて怖くなった。


近所にも伝えて毎日カメ子を捜索したが、手がかりはなかった。そもそも我が家の近所は野生のクサガメがいる環境なので、水路などに入ってしまえば、見つけることは不可能だ。一度近所の人が、カメを見つけた、と連れて来てくれたカメがいたが、野生のクサガメだった。


どこかで生きていてくれたら、と毎日考えた。しかし生きていたらきっと苦しんでいるだろう、と思うようになった。


きれいな水で配合飼料で育ったカメに、野生で生き抜く免疫力などない。大事にしていたカメを不幸にしてしまい、自分がつくづく嫌になった。


カメ子がいなくなって一年半、2023年が終わろうとしていた先月。12月30日の事だ。

私はその日家族とともに、お墓参りに行った。


お墓の前には深い堀がある。夏場は水がたくさん入っていて、ザリガニや魚がいる。しかし冬場は底のコンクリートが見えるくらいに水が減っている。その日は暖かい日で水面がキラキラしていた。


そこに1匹のカメが甲羅干しをしていた。あ、カメだ!と言って近づく私たちを、黒い瞳で見上げるカメ。全く逃げる様子がない。野生のカメはすぐにぽちゃんと水に飛び込むのだ。


カメ子ちゃん?もしかしてカメ子ちゃん?

私は声を掛けた。カメは堀の中からこちらを見上げる。カメ子かも!と娘が堀の陸地に飛び降りた。カメはそれでも逃げなかったが、届かない。


もし水に入ってしまったらカメ子かどうか確認できないので、急いで網を取りに帰り、カメをそっとすくい上げた。カメ、無抵抗で網に入る。


そして私は網をかきわけ、カメを手のひらに乗せた。嗚呼、甲羅も顔もボロボロだけど間違いなくカメ子!


もう一生会えないと思っていたのに、こんな広い大自然でたくましく生き抜いていた。しかも家から離れたお墓の堀で、カメ子は私たちが来るのを分かっていたかのようだった。


奇跡はあるのだ。


しかし、感動と喜びに震える私に厳しい現実もあった。

カメ子は両方の後脚を失っていたのだ。


慣れない自然を歩いて擦れてしまったのか、野生生物に襲われたのか、理由は分からない。

傷はもうかさぶたになっていて、新しい傷ではなかった。


色々考えると可哀想で苦しくなる。ごめん、カメ子。しかしありがとう、カメ子。よく頑張ってくれた。よく生きていてくれた!


カメ子は新しいケースに入れた。今日で12日。昔と全く変わりなく日向ぼっこをして私を見上げてくれる。可愛い前脚は健在で移動も出来る。


後脚がないカメ子がまたどんな奇跡を起こしてくれるのか、静かに見守って行きたい。