『宗教の起源』(ロビン・ダンバー。白揚社) | ゆめが丘 随想

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(弁護士 亀井宏寿)

「私たちにはなぜ<神>が必要だったのか」という副題が付いています。

 

狩猟生活を営んでいた段階では,集団の限界は,150人程度であり,それを超えた規模の集団を維持するためには,宗教やこれに類似する制度が必要となる,ところが,神様の存在を認識するためには,自他を区別して,他者の思考・思想を認識出来るだけの抽象的思考が可能となっていなければならず,それが可能となったのは,今から約1万年くらい前(古代エジプト文明などが成立した時期)であった,ユダヤ教,キリスト教などが成立した後も,「カルト」と呼ばれる集団が絶えず発生し続けてきたのは,教団の内部に絶えずストレスが生じているためであると説かれています。

 

宗教の起源|白揚社 -Hakuyosha- (hakuyo-sha.co.jp) 

 

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もともと人間の社会は,各構成員が自由な意思に従って振る舞えば崩壊してしまうものであり,文明生活を維持したいのであれば,何らかの人工的な制度が必要となるということのようです。ただ,インターネットの普及に伴い,文化的・思想的な「分断」が進んでおり,先行きが危ぶまれているところです。

パレスチナにおけるユダヤ人の国家とイスラム教徒の住民の間の紛争が宗教的対立として論じられることがありますが,宗教に基づく正義や信念とは異なる別の淵源によって,それぞれの立場の尊重を求める必要があるのかも知れません。一つの国の中の文化的・思想的な「分断」に関しても同様です。