ゆめが丘 随想

ゆめが丘 随想

(弁護士 亀井宏寿)

あなたの神,主が,あなたが入って所有する地にあなたを導き入れて,多くの国民、すなわち,あなたより数が多くて力の強い七つの国民であるヘト人,ギルガン人,アモリ人,カナン人,ペリジ人,ヒビ人,エブス人ををあなたの前から追い払うとき,そして,あなたの神,主が彼らをあなたに渡し,あなたが彼らを討つとき,必ず彼らを滅ぼし尽くさなければならない。彼らと契約を結んだり,彼らを哀れんではならない。彼らと婚姻関係を結んではならない。(・・・)あなたがたが行わなければならないことは,彼らの祭壇を壊し,石柱を砕き,アシュラ像を切り倒し,彫像を火で焼くことである。(旧約聖書 申命記 第7章第1節以下)

 

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旧約聖書の神様は,イスラエル人を救出して,カナン(パレスチナ)に導きましたが,その際,先住民に対するジェノサイドを命じています。その理由は,先住民が自分に対する信仰を持たないから,というものでした。このような発想は,全ての人々に対する救済を考える立場とは対極にあるように思われます。なお,ユダヤ教,キリスト教に起源を持つ(と言って悪ければ,ユダヤ教,キリスト教と同じ神様である)イスラム教の神様も,自分に対する信仰を持たない人々に対する怒りを繰り返し表明しています。

今でこそ博愛を説くキリスト教が支配していた地域でも,中世や近世には,「異端」に対する残忍な弾圧を繰り返していました。

 

今日,パレスチナ(イスラエル)で発生している事態は,旧約聖書の神様が命じていたのと同じことのように見えます。「博愛」を実現するためには,宗教的信念を一旦放棄することが必要なのかも知れません。