本 | もうすこし、生きてみようじゃないか・・・

 なんということだろうか。 あまりのことで目眩がする。 ひょっとして夢かもしれんと、頬を



つねろうとしたが、つねるまでもなく、たった今したであろう、愛猫サビの糞の臭いがガッツリ



している。 夢ではない。 



 以前、ここに図書館で借りた本をぞんざいに扱う者がいると嘆く記事を書いたが、なんと、



あろうことか、その僕が先日図書館から借りた文庫本を破いてしまった。 



 僕は、いつも畳の上にゴロンと寝転がりながら本を読む。 そして、眠くなると、しおりをは



さみ、本を閉じてから寝る。 だが、この日は、読んだところまでを開いたまま、本をうつ伏せ



に置いて寝てしまった。 目を覚まし、何気なく本を見ると、うつ伏せに置いた本の傍らに、



同じ文庫本サイズの小さい字が印刷された紙が1枚落ちている。 拾い上げて読んでみると、



寝る前に読んだページであった。 何があったのだ。 寝ている間に破いてしまったのだろう



か。 はっ!僕は、サビの顔を見た。 なに見とんねん!ワレェ!という顔をしている。 まあ、



サビが犯人だとしても、どうしようもない。 弟子の責任は師匠の責任。 さて、どうしたものか。



 まあ、考えるまでもなく謝るしかないのだが、怒られるにしても、小心者の僕としては、優し



く怒られたい所存。 ではどうするか。 弁償しかないだろう。 だが、借りた本は、10年ほど



前に復刊された文庫本。 巨大な書店ならいざ知らず、近所の小さな書店にあるだろうか。 



 考えていても仕方がない。 僕は雪駄を履いて家を飛び出した。 1軒目、この辺では比較



的大きめの書店に行く。 無い。 2軒目、1軒目よりも少し小さい書店に行く。 無い。 3件目、



小さい書店に行く。 あらへん。 僕は汗をぬぐいつつ、ネットで買おうかとも思ったが、やは



りここは、足を棒にして買ってこその誠意。 誠意。 それは、書店で文庫本を買ったときに



つけてもらえる紙カバー。 紙カバーこそ、新品で同じものを買ってきましたぞ! という誠意。



 僕は、一縷の望みをかけ、最後の書店、おばさんが経営している家みたいな書店へ向かっ



た。



 外より暑い店内。 僕は文庫本の小さな棚の前に立った。







 あった。 思わず声が出た。 あったあった! ありやがった! 僕は、素早く文庫本を買い



求め図書館へ向かう。



 図書館はビルの3階にある。 階段を上りながら、やるだけはやった、と思いつつもやはりド



キドキする。 優しい司書だったらいいなぁ。 できたら女子司書希望。 などと呟きながらカ



ウンターへ。 対応に出たのは青年司書であった。



 「あの・・・、すみません。 これ破いちゃったんですが・・・・」



 恐る恐る破れたページを見せると、ページを受け取った青年司書は、



 「あ、これなら補修できるので、いいですよぉ~」



 と、ふわりと言った。



 「はい!?」



 いやいや、待て待て待てーい! まだ続きがあるんだよ! シナリオが出来てんだよ! 紙



カバー付き新品誠意本サプライズがあんだよ! と、心の中で叫び、僕はカバンから、



 「そ、それで、これ・・・・買ってきました・・・・」



 と言って、文庫本を差し出した。



 「ふぁ!?」



 青年司書が大きな声を出した。 ドキリとした。



 「わざわざ買ってきてくれたんですか!?」



 青年司書は、とても驚いている様子。 僕は、そうなんですよ、おばさんのアッツイ店で買っ



たんですよ。 4軒目でやっと見つけたんじゃよ。 見たまえ、その紙カバーを。 誠意じゃよ、



誠意。 という心持ちで顔がニヤケそうになるのを我慢。 青年司書は、



 「少々お待ちください」



 と言って、奥の部屋へ入っていった。 しばらくすると、上司らしき五十年輩の男性と共に出



てきたのだが、その上司が僕に向かって、



 「この度は、わざわざ買ってきていただいて、ありがとうございますぅ~」



 と、深々と頭を下げたのである。 驚いた僕は、



 「い、いえ、こちらこそすみませんんんんんん」



 と、負けじと頭を下げた。 なんせ悪いのはこちらである。 上司と僕は、しばらく深々と頭を



下げ合った。 そして上司は、



 「これからは、このような場合は、まずこちらに持ってきてください。 補修できるものもあり



  ますので。 で、今回はお言葉に甘えて、この本は収めさせていただきます。 ありがとう



  ございます。」



 と言い、部屋に戻っていった。 上司を見送ると、青年司書が、こちらに記入していただけま



すか、と言って僕に紙を手渡した。 見ると、『寄贈申込書』 と書いてある。 寄贈である。 弁



償が寄贈になった。 なんだか心が弾む。 僕は、住所、氏名、電話番号などを記入し、青年



司書に渡して、最後にもう一度、すみませんでした、と言って図書館を出た。



 我輩、図書館に本を寄贈・・・。 帰る道すがら3回ほど呟いたりした。 なんだかスッキリして



嬉しい。 だが、これからは、もっと本を丁寧に扱わねばならぬ、と、気を引き締めたりもした。



 そして、近いうちに今日弁償した本を借りようと思った。 読んでいる途中だったので、続きが



気になるのである。



 自分が寄贈した本を借りる我輩。






                                                       亀久








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       ですなー!小心者の正義なので役に立ちません(笑) のりちゃんさん、


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       と同一犯!こえー!引っ越そうかな(笑) あこりんさん、お!似たような思


       考回路!共に頑張りましょう! おまめさん、さぞ困ったでしょうな!歯の


       痛みは我慢できませんからね!今度は落とさないように!僕のためにも!







       さて、トトロ観ながら呑むかのう。