したがって、食事中の方はぜひ、食事を済ました後に、読んで頂きたい。

僕は、昔、ゲームセンターで働いていた事がある。居心地が良く、かなり長い間お世話
になった。
その日、早番は、店長(以下・隊長) と僕(通称・亀) の2人だけで、僕は、休憩の
為、事務所で、お茶を飲んでいた。すると、隊長が事務所に入ってきて、「おい、亀、ちょっ
と来てくれないか」と言うので「あ、はい、」 と隊長の後について行った。隊長は、まっすぐ
トイレに向かって行き、ドアを開け僕の方を振り向き 「これを見てくれ」 と言った。
「!!!」 僕は我が目を疑った。
そこには胴回り30センチ以上は、あろうかと思われる大便が便器の中で、まるで、温泉に
でもつかるかのように、こちらを見上げていた。僕はパニックになり、一瞬逃げ出そうかと思
ったが、 (俺はこのゲーセンの隊員なんだ、逃げ出すわけには、いかない) と思い直し
グッと耐えた。「亀、今まで、こんなヤツ見たことあるか?」 「い、いえ・・・ないです」 僕たち
はインパクトや見た目の破壊力から、ヤツを ハイパーボム と名付けた。
僕は、洗浄レバーに手をかけ、隊長の顔を見た。隊長は無言で首を左右に振った。
しかし、唯一の武器は、これしか無く僕は、一縷の望みをかけ、レバーを引いた。
勢いよく水が流れ、僕は (逝ってくれ!!) と心の中で叫んだが、ハイパーボムは、体を少し
震わしただけで、平然としている。傷一つ付いていない。
(・・・警察に通報・・・) 一瞬、僕の脳裏を掠めた。(ヤツの体に鉛の玉をブチ込んで
頂きたい!) と思ったが、便器が壊れる可能性があり、なによりもハイパーボムの返
り血だけは、絶対に浴びたくないという思いから この考えは、すぐに捨てた。
すると、隊長がいきなり無言のまま事務所のほうへ歩いていった。僕は、驚いて
(何?敵前逃亡!?アンタそれでも隊長かー!!!) と、怒りが込み上げてきたが
隊長は、すぐに帰ってきた。しかし、顔面は蒼白で血の気を失っていた。ふと、見る
と、隊長の右手に傘 (以下・ファイナル・ソード) が握られていた。
隊長は、僕に、そのファイナル・ソードを差し出し、かすれた声で、「これで・・・」 と言った。
隊長の意図を理解した僕は、ファイナル・ソードを受け取った。しかし、むき出しで使うのも
可哀相なので、ファイナル・ソードの先端に数メートルのトイレットペーパーを巻きつけた。
準備は整った。隊長と目が合う。隊長が力強く頷いた。
僕は、ファイナルソードを振り上げ、(落ちろ!落ちろ!落ちろ!) と何度もハイパーボムの
体にファイナル・ソードを突き立てた。間髪いれず隊長がレバーを引く。
砕かれたハイパーボムの体は、激流に耐え切れず ゴ、ゴ、ゴォー と最後の咆哮と共に
跡形も無く、流れていった。
長年のゲームセンター隊員生活の中で印象に残る戦いの一つである。
亀久

