たが、途中で酒が切れたので、近くのコンビニまで買いに行くことにした。
酔っ払って絶好調の僕は、使わなくなって埃をかぶっていたキックボードを引っぱり
出し、それに乗ってコンビニに向かった。
途中、近所の駐車場が目に入った。その、駐車場は2階建てで、1階と2階は大きな
スロープで結ばれている。
僕は無性にキックボードでその坂を滑降したくなり、友人らに「俺は今からこのキック
ボードで、その坂を滑り降りようと思うが、どうか・・・」 と問うた。友人らは「やめとけ」
「ケガするぞ」などと、信じられないことを言いやがるので、「俺を誰だと思ってんだ!
バカ!!」と、吐き捨て、キックボードを坂の頂上まで押していった。
(フフフ・・・カメラを持って来ればよかったな・・・)

しばらくの静寂の後、僕は、地面を軽く蹴った。キックボードがスムーズに滑り出した。
僕は、すでに後悔していた。キックボードは、驚異のスピードでスロープを滑降してゆき
そのスピードをさらに上げていった。さっきまでの余裕のニヤケ面は、蒼白に変わり、
火照った体は冷たくなった。頭の中で、1つの言葉が繰り返された。
(ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!)
次の瞬間、僕が見ていた映像がスローモーションへと変わり、激しく転倒。
坂の中程からヘッドスライディングのような状態で、麓まで滑り落ちた。

「見た?見た?」 「見たー!ハンドルを握った手がプルプルしてたよー」 「あの顔
ーーぎゃはは!」などと、男性数名の大爆笑の声を遠くで聞いた。
その後、酒で酔っているせいか、痛みはさほど感じなかったが、宴会も終わり、
寝床についた頃に地獄はやって来た。全身に刻まれた擦り傷が痛くて痛くて眠れず
泣きそうになった。 激しい痛みの中で、僕は、(30を過ぎて、あのコケっぷり・・・
何やってんだ俺は・・・) (・・・カメラ持って行かなくてよかった・・・) と、思った。
亀久