H君 | もうすこし、生きてみようじゃないか・・・
 中学校に入学したての一年生の時、自己紹介カードというものを書かされた覚えがある。



 名前、出身小学校、尊敬する人などを書く欄があり、つづいて ”あだ名” という欄があっ



た。 僕は何を書いたかは覚えてないが、H君という人がいて、H君は両親や、同じ小学



校の友人からずっと 『マークン』 と呼ばれていたので、その欄に 『マークン』 と書いた。



 が、『マークン』 と書いたつもりが、『ン』 の部分が 『ソ』 になっており、以来、三年間彼



は 『マークソ』 と呼ばれるようになった。





 三年生になり、僕はH君と同じクラスになった。 その頃になると、H君と同じ小学校だっ



た者たちも皆 『マークソ』 と呼ぶようになっており、また彼も普通に返事をしていた。



 そんなある日、H君から 家に遊びに来いよ と誘われた。 彼の家に行くのは初めてで、



さすがに彼の親の前では 『マークソ』 とは呼べないなぁ と思っていたのだが、その思いは



次の瞬間消し飛んだ。



「マークソー!ジュース入れたから取りにおいでー」



 と、母親が叫んだのである。 この三年間で、彼の母親も 『マークン』 から 『マークソ』



へと呼び方が変わっていたようだった。



「おう」



 と、返事をし、ジュースを取りに行くマークソの後姿を見ながら僕は、吉本新喜劇ばりに



コケそうになった。





                                                  亀久





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