店内を徘徊し、目当ての本があると思われる棚の前に立ったのだが、
女性が一人、立ち読みをしていた。 僕は女性の邪魔にならないよう女
性の背後から少し背伸びをする形で本を探していた。
しばらくすると、女性がチラッチラッとコチラに視線を走らせるようにな
り、時折り振り向くようになった。 今、女性は広げた本よりも、僕に全
神経を集中させている。 明らかに警戒していらっしゃる。 そうなると僕
も女性に対し、警戒心を抱くのは自然な反応であろう。 警戒勝負勃発
である。

しばしの警戒戦の後、僕には勝てぬと思ったのであろう、女性は、本を
棚に戻し、足早にその場を去っていった。

僕の勝ちである。 完勝である。 僕の警戒心の強さを舐めちゃいけな
い。 僕は棚から本を取り、悠々と広げた。 そして、少々冷えた頭で考え
た。 そもそもなぜ、女性は僕を警戒していたのだろうか。 僕はただ、女
性の背後から本棚を見ていただけである。

もしかすると、女性は僕を盗撮男だと思ったのではないだろうか。 ああ、
だんだんそんな気がしてきた。 そうだ・・・。 きっとそうだ・・・。 決定だ。
僕は咄嗟に、何も持っていないことを証明するため真っ裸になり、女性を
追いかけ、叫びたい衝動に駆られた。
「き、君は勘違いしているぞー! 見てくれー、僕の持ち物はサイフとタバコ
とライターだけだー! 携帯電話はいつものように家に忘れてきたしー!!」
・・・・・しかし、それをやってはダメだ。 100パーセント捕まる。 ひょっとす
ると、真っ裸に手錠をかけられるかもしれない。 それだけは避けたい。
あの女性の中では、僕は今でも盗撮男なのだろうか・・・。
亀久
↓ 以下の2つのランキングに参加しております。
よければ、クリックの程を宜しくお願いいたします。
ブログランキングに投票 ←投票
ブログ村絵日記ブログランキングに投票 ←投票
清き一票をお願い致します。