赤ちょうちん横丁 | かめ新聞

赤ちょうちん横丁

 

酒場の迫力という意味で、北海道の道東に残る小路は身も心にもしみる。冬の寒さがさらに客の気分を盛り上げる。迫力というのは、生活の迫力である。店の人はどこか孤独をかかえながら、明るい、哀愁なんて安っぽいものでもなく、そんな雰囲気がとても好きだった。憧れかもしれない。

 もう8年がたつ。建設現場に常駐していた頃の話になる。釧路に「赤ちょうちん横丁」という横丁がたぶん今もある。70歳を超えた現役のママがいたりもした。横丁の入り口に「赤天狗」という焼き鳥屋があった。店は2坪あったかどうか。トリケラトプスにそっくりな80歳を超えた親父だった。

 「摩周の水」という謎なカクテルが名物だった。グラスの底でカウンターをダンと叩く、大きく叩く。そうしないと親父は注いでくれない。この仕草の気恥ずかしさに慣れた頃に常連となる。これを飲むとなぜか1、2杯でフラフラになる。現場の帰りにひとり足が向かった。あの親父は今どうしているだろうか。そろそろ釧路はシバレルね。