流行建築通信7/六本木心中 | かめ新聞

流行建築通信7/六本木心中


 だけど こころなんて
 お天気で変るのさ
 長いまつ毛がヒワイね あなた

 メールだって、だ、で終わるか、だよ、で終わるか、消したり付けたりするじゃないか。いい歌詞は一字一句吟味され、尽くしている。限られた言葉数の中で伝えきるためには、聞き手の想像力を利用するし、言葉を限るほど、読み違えを許してしまうこともおこるんだろう。あえて、いろんな解釈を取れるように作られた歌もある(太田裕美の「木綿のハンカチーフ」はその典型か)だろうが。言葉を気安く並べる説明的な歌詞には想像力も働かないし心は動かない。ただ、読み違えるギリギリまでも言葉を落とし残った言葉には力がある。

 「だけど」
 このいかにもな唐突、せわしなさこそが、時代の気分だったろう。
 「ヒワイ」
 この言葉にこの曲の全てがある。ピッタリだ。つまりこの言葉があると無しでは、曲が違ってくるということ。

 建築はディテールで決まる。たった言葉一つが、曲の全体を左右してしまうのと同じように、ディテール(部分)が、建築(全体)を決定することが起こるだろうし、その逆に、建築(全体)を台無しにする事もあるだろう。これしかないっ!というディテールまで詰めきれていない自分に帰り、今夜も酒を少々、浅川マキを聴き、歌から建築を学んでいる。