賛否両論の"福野節"ですが、なかなか面白い本でした!

性能競争が鈍化した現代で、スポーツカーやスーパーカーについて真正面から考えている良い本だと思います。

今日は『スポーツカー論』の一部、デザインの部分について要約してお伝えします。


車のスタイリングは絶対的に機能性からの発展であるべき



車のスタイリング=設計は、その車が作られる目的に沿ったもので無ければ美しくなどなり得ない。


曲線美だとか女性らしさだとかを考えている人は"スタイリスト"であって"デザイナー"ではない。


昔は、車の企画から販売まで一連作業で行われていたが、現在は各種分業されている。

そのために、今の車は機能性から遠く離れたデザインが出てくる。それを以って近未来・斬新などの言葉を当てがって記者が喜んでいる。


車の方向性を定めて、そのために物理法則で1番効率のいい形を追求してこそ美しい車だということだ。


スタイリングからモデリングへ

スタイリングは設計段階、すなわち机上で行われるものを指している。


それと実物を組み上げてコンセプトカーから市販車にするまでの流れはまた別の仕事。

これを福野氏は"モデリング"と呼ぶ。


左が市販車。右がプロトタイプ。


プラモの設計と組み上げるのは別物だということだ。上手な人が作ったプラモと下手な人のソレでは大きな違いが出る。


福野氏によると日本メーカーでは、マツダがモデリングの天才らしい。

スタイリングはそこそこだが、それこそユーノス500や初代ロードスターなどモデリングが素晴らしい車が多いとのこと。うむ、たしかに🤔



ここまでのまとめ

つまり、車作りの基本というのは、


方向性の決定

機能性から発展する設計

(スタイリング)

実物を作ってみて検証

(モデリング)

市販


この連携が崩れて、一部が独立した悪さをすると車は崩れていく。


例えば、機能から大きく外れたデザインや無駄な大きさは仇となる。

現行スポーツカーより、昔の方がカッコいいと思えるのはこの辺りに理由がある。



カウンタックを眺める〜カッコ良さの方程式は?〜

車の好みはともかく、誰もがカッコいい‼️と認めざるを得ないような車は存在する。

≒スーパーカーといえるかもしれない。



その一例がカウンタック。

ミウラの後継機として生まれながら、曲線調から打って変わって躍動感が溢れた。少し危険な香りがするほどに。


福野氏は、カウンタックを通してカッコ良さの要素を何点か挙げている。

・走行性能に特化したスタイリング

・低いノーズ

・開放的なリア

などなど。


特に、リアのデザインをフロントから一連の流れで閉じて終わる閉鎖型と突然途切れる形の開放型の2つに分けている独自論を展開。


新幹線の先頭車両や飛行機など、後ろが唐突に途切れるように終わる形は、一種の危うさがあり躍動感溢れているという。




確かに、往年のカッコいい車は後ろがカックンと途切れている。



GTウイングの装着は、もちろん走行性能から来るものだが、開放型エンドの演出にも一役買っているわけだ。



「軽い」「小さい」は正義!

ここまではデザインを中心に本の内容を紹介しました。


機能性からスタイリング→モデリング→その上でかっこよさを追求


この順序でした。無駄を省くとそれだけでカッコ良い。そしてその中でさらに競い合う姿勢が大切なんですね。


最後に、機能性について。

ファミリーカーやRVではなく、スポーツカーについて考えます。


スポーツカーとは、

軽くあるべき

だというのが福野礼一郎が導き出した唯一無二の答えです。



ケータハムのセブンは、軽自動車のエンジンですから、たった660ccしかありません。


しかし、軽いから必要とするパワーやトルクが小さく済むため、凄まじい加速が味わえます。


スポーツカーは軽く、ピッタリと必要十分な性能のエンジンを乗せて操れればそれがベスト。

その他、細かいところは後から工夫していくというのが正しい作り方です。



イギリス的な車作り

ロータスは生粋のスポーツカーメーカーですが、車が全て小さいですよね?


ロータスのようなスポーツカーメーカーは、最初にパッケージを作って合うエンジンを探しています。故に一切の無駄がないのです。

(無駄のないということはスタイリングが美しいということでもある)


エンジンありきで箱を作るドイツとは根本から違うのです。それだと、エンジンをしまうために、どうしてもスタイリングに無駄が出てしまう。重くなった車を動かすために、またエンジンが大きくなるという悪循環に陥りがちです。


最近の日本車も同様です。

パーツやエンジンの共用化が進み、車の大型化が進んだせいでずんぐりした車ばかりです。




これは個人の感想ですが、

日本産でも、パッケージありきで無駄なく組み立てられた車は絶賛されていると思います。



日産プリメーラやユーノスロードスター、三菱ランサーエボリューションなど。


○○な車を作ろう!
と構想して、見合うパッケージをスタイリングしていざモデリングしてみる。
細部を整えて、さあ!必要なエンジンは如何ばかりか!と最後にエンジンを載せた車です。

レースのレギュレーションは時として、そういうものの基準となり美しさを生みますね。


この本を読んで思ったこと

もう一度、日本車は見直してはいかがか?


○○な車を作ろう!

という目的に向かって、必要最低限で作ったらいいじゃないかと。


例えばフェアレディZ。

現行をスポーツカーだと思ったことは無いけれど、もしスポーツに立ち返るなら、

「FRスポーツカー」

を本気で目標にして、FRパッケージを作り、極限まで車重を削って、その後で必要なエンジンを選べば良い。


実は現行車にも、そうして作られた車が混ざっている。例えば、新型プリウス。



ハイブリッドのハッチバックセダン

を初代から一貫した信条として、基づいたパッケージを展開。

走行性能(空力や低重心化)を意識したスタイリングは美しく、それを実際に作り上げたモデリング。スーパーカー顔負けの低いノーズ、開放的なエンド形状。極端に出力アップせずに、載せたハイブリッドシステム。


何から何まで、福野氏の理にかなった車だと思う。(スポーツカーではないけどね💦)


他社にもこういう車作りをして欲しいと思います。日本は本来、小さい車作りが得意なはずです‼️