どん亀です

 

今日はちょっと小難しい話題です

 

「経度問題」という言葉は、日本ではあまり聞かない言葉ですが、船乗りならご存じの方も多いと思います。

 

船の位置は地球上のどこであろうと、緯度と経度で表すことができます。

 

 

緯度は赤道を基準にして南北の距離を表しているので、太古の時代から正中時の太陽高度を測ることによって正確に知ることができましたが、大航海時代になっても経度については正確に知る方法がなく、船が東西方向にどれだけ動いたかがわからなかったのです。

 

この経度を正確に知ることができず、船の正確な位置がわからないということが「経度問題」なのです。

 

18世紀の初頭に英艦隊が大西洋を航行中,船位がわからなくなり、軍艦4隻が座礁して2,000人近くが亡くなるという大惨事が発生し、英国は経度問題の解決に真剣に取り組むことになりました。

 

経度を正確に測るのが難しかった最大の原因は、正確な時間を知ることができないことでした。

正確な時間がわかれば、その時刻の天体の位置を測定すれば、正確な経度が計算できることはわかっていたのです。(もちろんそのためには、大量の天体観測データが必要なのですが)

 

この経度問題を解決に導いたのは、なんと大工のジョン・ハリソンでした。           

1693年生まれのハリソンは1713年20歳になる前に木製の振り子時計を造り、改良を重ねて誤差1秒/1月という驚異的な精度(当時世界最高級の時計の制度は1分/1日の誤差)の時計を完成しましたが、振り子時計は揺れる船上では使い物になりませんでした。

 

そこでハリソンは,海上で正確な時間がわかる時計を作るという難題に取り組み、約20年をかけて、重さ34kgの世界初の高精度舶用クロノメーターを作り上げ、実際の航海でその成果を出しました。

 

しかし、完璧主義者だったハリソンは,まだ改良の余地があると考え、6年後に2番目のクロノメーターを完成。

 

48歳になっていたハリソンは、それにも満足せず、三作目を製作するため,その後19年間をかけて3番目のクロノメーターを製作

 

さらに3番目を製作中に懐中時計にヒントを得て、1761年に重さわずか1kgの4番目のクロノメーターを完成させました。

ハリソンの懐中時計型クロノメーターは1761年に大西洋横断の航海で試され、81日間でわずか5秒しか遅れないという高精度を証明しました。

 

1772年,有名なクック船長も歴史的な航海でハリソンのクロノメーターを使い、その性能が期待をはるかに超えるものだったと述べています。

クック「このクロノ めちゃええで」

舶用クロノメーターの開発に人生をかけたハリソンは1776年に83歳の誕生日に亡くなりました。