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☆瞬弥side☆


賑やかに過ごす昼休み。

そんな中で静かな空気が流れ込む図書室。

日が当たっていないせいか、少し涼しくてひんやりと冷たい。

やっと意味を理解してきたのか、衣緒は俺に問いかけた。

「わっ私、事情聴取なんてされるようなこと…してないよ!?」

焦ってあたふたしてる衣緒を見るのは飽きない。

でも…

他の男にもそんな表情みせてんの?

俺だって男だ。

余裕かませれるほどの器だって持ってない。

俺以外のやつが衣緒のことをかわいいと思うのはおもしろくないわけで……

「それがしてんだよなー俺を困らせるような悪いこと」

「悪いこと……って私は何もしてないっ!」

衣緒が俺を困らせたっていうのは事実。

後輩に嫉妬を抱く姿。

初めて発見する新しい顔。

俺にとってそれは愛おしいものだった。

そんなの見たら困るにきまってる。

罠でやってんじゃねぇのってくらいに俺を動揺させる。

本人は知らないだろうけどな。

「衣緒ちゃんは何で怒ってたのか言えるよな?」

あきらかに、からかい口調。

ドキドキされっぱなしなのは性に合わない。

久しぶりに反撃開始だ。

2人っきりの図書室には誰も邪魔が入らない。

そして、壁と俺に挟まれている衣緒に逃げる場はなかった。

学校だというのも忘れるような感覚。

「……言わないっ…」

恥ずかしがって衣緒は俺と目を合わせたがらない。

軽くそっぱを向いて頬を赤く染める。

それがまたかわいかった。

あぁ…

俺、本当に衣緒が好きなんだな。

顔や性格はもちろん。

ちょっとした仕草だって胸の鼓動を早めた。


俺だけを見ていればいいのに…

その大きな瞳に俺だけが映っていればいいのに…

「言わないんならおしおき」

「へ?」

角度を変えて衣緒にキスをした。

「ちょっ……しゅん!……はぁ…んっ…」

他の男が衣緒の話をするだけでむかつく。

檻の中に閉じ込めてしまえば、どんなに安心できるか…


衣緒が苦しくなってきそうだっため、唇をはなす。

「んっ!はぁ…はぁ……今日で2回もするなんて!ばかばかばかぁ!」

呼吸を整えて上下している衣緒の肩に、顎(あご)をのせる。

「ひゃぁっ!くすぐったい…ってばぁー…」

わかってはいるけれど、あえて聞き返した。

「2回もって何を?」

「学校でキスしたのっ!」

てか、今更だけど衣緒ってキスすることが嫌いなのか?

恥ずかしがるばっかだし、キスして喜んだ試しがなかった。

「衣緒は…俺とキスするのがイヤなんだ…」

いつの間にか図書室には温かい日差しが入り込み、緊張している衣緒の手には汗がにじんでいた。

「違うよっ!イヤではないけど…私、キスとか恋とか全然経験ないでしょ?だから急な出来事にびっくりしちゃうし、まだ緊張しちゃって…ごめんね?」

いや、謝られても困る。

衣緒がキスの経験がないって…

ファーストキスが俺だったってことだよな?

そんな小さなことに対しても嬉しさがこみ上げた。

「ごめんって別に衣緒は何もしてねぇじゃん」

「そーかな?だって…私、キスとか上手くできないし……」

……―意外だった。

衣緒がそんなこと気にしているなんて知らなかったし…

まぁ、確かに衣緒はキスが上手いわけではないと思う。

でも俺は衣緒にキスの上手さなんて求めない。

ただ、俺に必死についてこようと、ぎゅっと目をつむっているところが愛らしいから。

それだけで俺は満足だ。

「キス、別に上達しなくていいけど?」

衣緒のは、そのままでいてほしい。

「何それっ!……って、あ!本当は私がキスが上手くなったら困るんでしょ?」

衣緒は珍しくニヤリと怪しい笑みを見せた。

逆転と言わんばかりの顔。

こんなことで俺が引くって考えが甘いな。

「衣緒は今の状況わかってんの?なんなら、またその悪いこと言う口を塞ごうか?」

冗談交じりで言ったつもりが、衣緒は相変わらず赤面。

「瞬弥は私をドキドキさせるの上手だよね…」

上目遣いで言う台詞、間違ってるし。

そんなの逆効果で俺の感情をかきたてるだけ。

「衣緒だって……――」

「なっ何!?」

衣緒が異常に反応したのは俺が首筋を撫でたせい。

俺だって緊張だってする。

まぁ、衣緒ほどじゃねぇけど。

その時、いい案をひらめいた。

「キス、緊張しない方法教えようか?」

「そっそんな方法あるの!?」

「…慣れればいいんじゃね?」

そうすれば、緊張しなくなるだろうし?

あながち、嘘ではないだろう。

「かっ、からかわないでよね?簡単に慣れることができるんだったら苦労しないのっ」

「だから、慣れるまですればいいじゃん」

「きっキスを!?」

まぁ、衣緒がキスに慣れたらつまんなくなるだろうけどな…

その前に衣緒が慣れることはないだろうし…

これを口実にキスできるんだったら、それはそれで好都合だ。

「そっその慣れるのって今からするの!?」

「どうしよっかなぁー?」

寸前まで顔を近づけた。

「しゅ…んや?」

キーンコーンカーンコーン))

運がいいのか悪いのか、丁度昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

「ほらっ教室帰らなきゃっ!」

衣緒は俺の胸を手で押してその場を逃げようとした。

「ちぇっ後ちょっとだったのにな」

衣緒の顔を見るのに夢中でキスを逃してしまった。

俺も、まだまだってことだな。

「もう…!5時限目始まっちゃうよ?」

授業に遅れるのは面倒だ。

仕方なしに本棚についた手を離した。





✿衣緒side✿


今日の瞬弥…

いつもと雰囲気が違ったような…

ちょっぴり…――というか大分?

意地悪が混じってた。

毎回、心臓が高まっているというのに…

「……やっぱり、ばかぁ」

家で1人ぽつんとつぶやいた。

今、何時かなぁとケータイを見て確認しようと思った。

ん?

これ…

時原尚人に送ろうと思ってたメール?

作成途中で瞬弥が来ちゃったんだもんね。

送らなくってよかった。

だいたい無神経すぎるよね!

こんな相談をよりによって時原尚人にするなんて…

何考えてるんだろう…

これを期に、強くなるって誓おう。

いつまでも子供のままではいたくない。

もう、私は16歳。

瞬弥がモテることだって今始まったことではないんだし…

これから少しずつでも受け止めていくのか彼女だよね?

時原尚人に送ろうとしていたメールを取り消しボタンをクリックして削除した。